棚上げ

メガソーラー工事中断山笑ふ

遠目にも痛々しい。

今日のように天気がいい日はなおさらだ。
ソーラー発電基地を作る計画で始められ山膚がざっくりと削られてから、詳細を知らされてなかった住民が反対して開発を許可した県も棚上げせざるをえなくなった土地だ。
山土が剥きだしになったまま、周囲が芽吹きの兆しをみせていよいよ山にも春がやって来る。

登り窯

窯跡を剥ぎて保存の山笑ふ

なんでも推古期の窯跡らしい。

それが住宅地の一画に移されて誰でも見ることができる。
この辺りにできた寺院の屋根を葺いた瓦を焼いたと伝わっている。当時は瓦屋根は寺院くらいしか葺かないものだった。
もしかしたら法隆寺の伽藍の瓦の一部もここで焼かれたかもと思うと想像がいろいろふくらんでくる。
高さ10メートルほどの登り窯で、屋根をつけ囲いで覆って保存に務めている。住宅地の開発のおりに発見されたというからまだ二十年は経ってない。聖徳太子ゆかりの信貴山下、我が家から百メートルも行かない場所にあったそうである。

ヒット

ダイソーでしこたま買うて山笑ふ

多彩な商品の棚を眺めるのも楽しい。

こんなものまであると思はず手にしてしまうものも。
欲しいものがある場合、試しにまずはダイソーで探してみるといい。意外にヒットしたりするかも。
だけど、百円だからとついついバスケットに放り込んだり。山にも笑われそうである。
今日はぐっと我慢して初期の狙いのものだけ買ってきた。

杜撰

開発の中断されて山笑ふ

いっせいに山の緑が吹き出した。

落葉樹が多い山ならではだが、冬から春への変容は息をのむ美しさがある。
その美しい山容を無残にも切り取って大規模太陽光発電の計画がすすんでいたが、平群町民の反対で頓挫している。始末が悪いのはすでに樹木が完全に切り倒され山膚の爪痕もあらはに、裾からも無残な姿をさらしているのがよく見える。相当規模の大きい開発で、山塊の崩壊による災害を招きかねないと住民運動が起きていたところに、ずさんな計画がつぎつぎに明らかになりメガソーラーの許可を出した県も止めざるを得なかったようである。
開発途中の映像を見るにつけ、よくもこんな杜撰な工事がすぐ近くで行われたのには戦慄を覚えるが、これを安全な状態に復元するにも課題が多いだろう。熱海の土砂災害の件もあり、このような危険な開発計画が他にもすすんでないか、おおいに気にかかるところである。

皮膚感覚

空堀の痕跡残し山笑ふ

低山といえど動意あり。

雑木が芽吹いて山膚がざわざわしてきた。今日などはゴールデンウィークの頃の陽気だというし、すべてが春から初夏に向けてあわただしくも感じる毎日である。
皮膚感覚としてはもう晩春といっていいだろう。

豊かなものがたり

巳神のとぐろと見ゆる山笑ふ

ご神体の山は蛇がとぐろを巻いている形であるとも言われている。

三輪山には古事記に「大物主大神と活玉依姫(いくたまよりひめ)の恋物語」で、姫のところに夜な夜な訪ねてくる若者の衣に糸をつけて後をつけると三輪山の大物主大神だったとか、日本書紀に「大物主神の妻・迹迹日百襲姫(やまとととびももそひめ)」が夜しか顔を見せない大物主神に顔を見たいと言うと、決して驚いてはいけないという条件で姫の櫛箱に入っていることを打ち明けるが姫をこれを開けて悲鳴を上げると大物主神は三輪山へ帰ってしまった。姫をこれを恥じて陰を箸でついて死んだ、など多くの逸話が伝わっている。
このあたりは、三輪山の神語りにあるので、ご覧になると他にも美酒つくり、杉玉など、古代の深層に連なる豊かな物語があることが分かる。

あちこち招致騒ぎ

リニア招致くすぶってゐて山笑ふ

生駒の山々が萌えている。

鞍部にある暗峠もさすがに萌黄色がまさって、いつもよりよほど明るく見える。
聞くところによると、生駒山はかつて全山どこでも松茸が採れたそうだが、その後の松枯れのため楢や櫟にとって代わられた。が、やがて薪からガスの時代になると手入れもされず大きくなりすぎて、今度は楢枯れの浸食で姿を消すのも時間の問題だという。
そうなると、次は青木などの低い照葉樹の出番となって、今とはまたまったく異なった様相を見せるらしい。
わずか100年ほどのあいだに目まぐるしく植生が変わるとは驚きだが、ここ2、30年のうちにリニアが貫くかも知れず、太鼓から聖地として崇められてきたお山も騒々しいことだ。
騒がしいと言えば、今さら万博だの、賭博場など、都構想など、よそからは冷たい目で見られていることに気づかないのだろうか。