旧嵯峨御所大覚寺門跡

苔庭の落葉掃くより弾きたる
山茶花の散るを意匠に苔の庭
水鳥の広く遊べる庭湖かな
大池の北はよく溶け枯蓮
枯蓮を撮って白雲映りこむ
名勝の名のみとどめて滝涸るる

想像以上に立派なお寺に圧倒された。

さすが門跡寺院の代表とされるだけの気品があり、短時間に見て歩くにはもったいなさすぎる。また、大沢池の広さはどうだ。さまざまな冬鳥も到来して、留鳥ともどもあまたいるのに、ちっとも狭さを感じさせない。あと千羽くらい飛来したとしても特別多いようには感じないのではないだろうか。

そのうえ、名古曾滝跡脇にある歌碑を見てはたちどころに百人一首55番藤原公任の歌と教えてくれる友もいて、なんともゴージャスな旅だ。

吹き寄せ

水鳥の一ト日湾処に風避けり

信貴山颪が容赦なく大和川に吹き下りてくる。

100羽以上はいるかと思える鴨たちも、さすが強い風には抗しきれないのか、こんな日は風を避けるようにして川の片側のくぼみに固まってじっと動かない。

橋の上を行く人もまたしっかり襟をたてている。

どんぶらこ

水鳥の早瀬追ふとも流るとも

どんぶらこ、どんぶらこ、と鴨が早瀬を下っていく。

パートナーを追っているのか、それとも瀬に流されているのか、どちらとも言えるが、それにしてもここは流れが急である。下へ流されてはまた上へ飛び、流されながら少しでも流れが緩いところ、澱みがあれば餌をついばむのに余念がない。

この冬もまた鴨たちがいつものところに群れ、春先になれば帰って行く。毎年変わらない営みである。