絵画的

雲湧いて墨絵めく山花灯し

平群を囲む山には雨後の雨がわいてまるで墨絵のようである。

そういうモノクロの世界に淡いピンクのアクセントをつけているのが桜である。
すぐ真下で花を見上げるのもいいが、こうして遠くからまるで絵画を眺めるようにして楽しむのもまたよきかなである。
ところで、町には至る所に染井吉野があるが、よく見るとそれぞれ微妙に咲き具合が違うようである。早いところでは三分咲きくらいまで進んでいるかと思えば、まだ開花したばかりというものまで、意外にバラツキがあるのである。特徴的には川沿いの桜がそうじて遅いようだ。
この雨があがり晴れ間が出てくればまた別の絵が眺められるかと思うとわくわくしてくる。

選挙戦最終日

連呼して花逝く雨を呼びにけり

冷たい風を伴う春時雨だった。

この雨はどうやら花にとどめの雨となったようである。
これよりは初夏の花、花水木、藤、桐など鮮やかな花が野山、里を彩るはずである。例年よりは早く初夏を迎えようかという陽気だったが、ここしばらくは平年並みとか。
今日はまた一枚羽織るような花冷えでもあり、猫どもも暖房でおとなしく寝ているようである。
明日は知事選、県議選投票日。昨日今日はひたすら連呼の候補者であったが、さて誰に投票しようか。

溜息

下千本咲いて記憶の花行脚

下千本が満開とのニュース。

当地へ越して次の年吉野の上千本から中千本へと旅した記憶が甦ってきた。
圧巻は満開の中千本の坂道。長時間歩いた疲れを吹っ飛ばしてくれる桜、桜のトンネルの逍遥。
もう一度行きたいが家人の体調が思わしくなく見送らざるを得ない。
コロナ禍でピーク時30万人の人出も昨年は三分の一ほどになっているからチャンスと言えばチャンスなのだが。
報道の画面を見ては当時の思い出にひたっては溜息がもれる。

花散らし

山かとも野とも分かたず花の雨

こぬか雨にものみな真っ白になってしまった。

山裾には淡い桜が満開のはずで遠出をせずとも眼福の至りなんだが、それが雨のけぶりによってすっかり周りと同化してしまっている。
今日が満開宣言なので花散らしの雨にならないか心配である。
明日は花冷えの予想が出ている。コロナ以来出かけてまで花を見に行こうとは思わないが、せめて昼間くらいは外で眺めていたいものである。

もうすぐ満開

濃淡の並木の濃きは花七分
にぎやかに桜散らしの鳥の声
もしかして卑弥呼の墓の桜かな

ヒヨドリは桜の蜜がよほど好きなようである。

先ほどから頭上でしきりに啼きながら花から花へ移っている。それも一羽ではない。
卑弥呼の墓ではないかとも思う黒塚古墳の上に昇ると濠に沿って並んでいる染井吉野が見事である。
桜並木には淡い色の部分とちょっとくすんだような濃い桜色とが混ざり合っていて、どうやらそれは満開かそうではないかによって違うようである。
蕾を多くもった木はどことなく色が濃くて、満開に近い木ほど淡いのである。
下から見上げていると分かりにくいが、高いところから見下ろすとそれがよく分かる。
六分から九分咲きくらいが今の奈良盆地の桜情報であろうか。

親戚に急な不幸があって予約投稿とさせてもらいます。

ストレスフリー

豪邸に似合ふ犬ゐる花の庭

数百メートルの當麻参道には立派なお屋敷が居並ぶ。

門から7、80メートルくらい入ったところの邸宅などは、道路からやや上り気味になっているのでちょっとしたお城にも見えてくる。
おりしも、庭の大きな桜が満開を誇っているときで、こんな家で飼われるとこうなると言わんばかりの鷹揚とした大型犬も見える。
たいしたものよと感心もするが、わが家の猫どももまあまあストレス少なく転がってるので良しとしなければなるまい。

立会人

死票を無言で投ず花の昼

知事と県会議員選挙の日。

投票所入り口の満開の花とはうらはらに、投票所は閑古鳥。われら夫婦以外は役所の人間と立会人だけ。
花の日曜日と重なったことよりも、全政党が推薦の知事選とただでさえ指定席の定員減の県議選では闘う前に結果が見えてる選挙とあっては白けるのも当然であろう。
せめての意志を投票箱に放り込まんとするとき、パイプ椅子の立会人ふたりと目があった。