晴っぷり

新月の底は銀とぞ霜の声

夜中に目覚めて外を見た。

月がない夜にもかかわらず、通りも町並みも街灯があるせいだろうかぼんやり浮かぶように輝いている。まるでいぶし銀の景である。
未明に向けて霜がいまだ太りつつあるのだろうか、不思議な世界に迷い込んだような感覚にとらわれる。
もしかして今年一番の霜の厚さになるかと思ったが、実際に目覚めると特別変わらない様子だった。
厳しい朝だったが、昼間は今日もまた大寒らしい晴っぷりである。

雲海

霜置いて大地曇らす靄の朝

予報は晴れなのにのっけから曇り空である。

晴れたらやることがたくさんあるので手ぐすね引いていたら当てが外れた格好だ。
ただ、ベランダで洗濯物を広げていたらこの薄曇りは靄であるらしいことに気がついた。
洗濯をあきらめていた大物を洗う日が来たと急いで二回目の洗濯機を回す。
案の定10時頃になると靄がはれて青空が見えてきた。おまけに久しぶりに外は温かい。
地元写真家によると、この日は盆地の底を雲が覆う、いわゆる雲海が見られたと発信していた。
季語は霜で冬だが、靄晴の春の日であった。

放射冷却

ハンドルの霜の厚さを拭ひけり

今朝の霜は厚かった。

原付バイクのメーターボックスがすっかり覆われて文字盤がまったく見えない。
指でなぞるだけでは除けないので、こするようにして掻き取ってようやく文字が見えてきた。
厚さは2ミリ以上はあったろうか。
さいわい外の水栓が凍るほどではなかったが、残った野菜たちが霜でげんなりしている。これでまた少し甘くなるかもしれない。
日があがるにつれて気温がだんだん高まり、風もないとあって久しぶりの穏やかな冬日である。
典型的な高気圧による放射冷却の朝だったと言うわけである。
末の子が2泊3日の予定をおえて東京へ帰って行った。
勢揃いすることはなかったが、久しぶりに家族の団欒にひたれた正月となった。
新型コロナが猛威をふるう都会でも負けずに頑張ってほしいと祈るばかりである。

初霜

チン鳴ってウィンナ解ける霜の朝

初霜が降りた。

すぐに解けたが、水栓の水が妙になま温かいのを新鮮に感じた。それは、まるで地中に張り巡らされた血管のようで、脈打っているその体温に触れたようだった。