ど根性大根

野菜屑コップに育ち花大根

twitterで面白い画像がアップされた。

わが家でも利用済み豆苗のパックを窓口において10センチほどに育っている。
この大根の花はさしずめ「ど根性花大根」というべきか。
情が移って捨てるに捨てられないという言葉にこのひとの優しさを見た。

花粉に負けず

鼻声でねだるも狡し春の風邪

インフルのピークは過ぎたようである。

が、花粉アレルギーがひどくなるのはこれから。
試しに薬を処方してもらったが、日に一回寝る前に飲むお約束がどうも守れない。飲んだり飲まなかったりの繰り返し。
だが、その薬効あってか先週日にティッシュ一箱も使ったのが今のところ嘘のように再発しない。継続して服用するのがいいようである。
雨上がりの後がもっとも危険と聞くのでなるべく外には出たくないが、やはりバードウオッチングの魅力には勝てない。顔にはマスク、頭にはすっぽりの帽子、滑りやすい繊維の服装、いろいろガードしながらまた大鷹の揚々とした飛翔を探しに出かけるとしよう。

復調か

多武峰ひと筋けぶる野焼かな

気温がぐんぐん上がって気持ち悪いくらいである。

おまけに無風に近く、飛鳥吟行には最高の条件。
野を燒く煙が這い上って多武峰をかきくもらせる。
あらためて飛鳥野を見渡せばかしこに畦焼く煙も立ちのぼって、霞のようである。
春田のずっと先にはたおやかな耳成山がいっそう柔らかく見える。
足もとには早くもイヌフグリが咲き始め、草萌えの春田も起こしてもらうのを待つかのようである。
気分もよくして、望外の出来。ここ二、三カ月の絶不調も上向くかどうか。

ジェットコースター

立春に絞りし酒のラベルかな

奈良は清酒の発祥地だそうである。

室町時代に市内の正暦寺ではじめて醸されて、その伝統をほそぼそとつないできたが、最近は清酒発祥地を合言葉に県内醸造元にも種母が配られて各社はその味をアピールしている。
いずれも地元消費が多く、必ずしも全国的な知名度は高いとは言えない。今日立春の朝に絞ったものをめでたい「立秋朝絞り」として即日出荷されたのも固定的な顧客宛であったという。
なにごとも欲の少ない県であるので、商品を県外にまで販路を広げる動きも鈍く、移住者からみると歯がゆいと思うことが多い。

それにしても気温の上下動が激しい。4月の陽気かと思ったら今夜にもすぐに逆戻り。ジェットコースターのような気温で体調を崩されることのないよう。

近場

春惜しむ雨となりたる小江戸かな

予想を裏切って思ったより静かな雨である。

こんな日なら古い町並みのそぞろ歩きが似合いそうである。
黒い瓦に湿りが加わってさらにしっとり感がまして、漆喰の壁、連子格子などがぴったりくる。
小江戸への小旅行。近場の日帰り旅として最適ではなかろうか。

牡丹の季節

こもりくの峨々たる渓の懸藤

隠国の道を通るたび感動がある。

両方の山がせまってくる隠国の道は、いま藤の山に囲まれている。
あらためて眺め回すと、下から上へこんなにも多かったのかと思うほど、元気な藤が大木に絡んでいるようである。
長谷寺の牡丹はいまが最盛期というニュースが流れた。
牡丹もさることながら、薄紫色が点々と浮かび上がるようなまわりの山の風情もまた佳きかなである。

蛮勇

前日に現地入りせる日永かな

もうそんな時期ではなかろう。

「日短か」という季語で読んでも決しておかしくないのである。
この「日永」というのは、やはり三春のうちでも初春、仲春の端境ころが一番雰囲気が合いそうである。
それより前だと、「日脚伸ぶ」の感じがまだ残っており、後であれば「日短」「短夜」を使いたくなる。

出張先で、相手が訃報とか、急に本社に呼ばれたとかの急用ですっぽり時間があくことがある。
その日のうちに帰れるとか、そうでなくても勝手知る場所なら途方に暮れることはないのであるが、初めての土地にぽんと放り込まれたりしたら。
この際ついでだからと観光を決め込む蛮勇もいいが、いずれにしても昏れるまでの時間はとてつもなく永く感じるものだ。
掲句は逆に、ちゃっかり前日までに現地入りして午後を楽しもうというのだが。
さて、現代ではこんなことしていたら、上司や部下に睨まれるに違いないか。