ぽっくり往生

逝く春や馬券買うたも忘れたと

悲しいかな何割かの確率で人は認知症を患う。

友人の訃報につづいて同期では最も若い(早生まれの)友人の消息が流れてきた。ここ一二年そんな話は風の噂に聞いていたが、重ねて聞くと遠い人になってしまうのかと気が重くなる。
直接死因となる病でもない認知症だが、死因のうち最も高い割合とされる癌同様できれば避けたいと思ってしまう。
隣の斑鳩町にはぽっくり往生の寺と知られる吉田寺きちでんじがある。
開祖恵心僧都が母に魔除けの祈願をした衣を着せたところ、なんの苦しみもなく往生したというところから、高齢者のお参りがたえないという。

蜥蜴か金蛇か

確かむる間なくてとかげ消えにけり

ニホン蜥蜴とニホン金蛇はちがうらしい。

調べて分かったことだが、金蛇の尾は全長の三分の二を占めることですぐに見分けがつきそうである。
また、生態も若干ちがうようで、蜥蜴は石や木材の下に逃げ込むことが多いのに対し、金蛇は茂みに逃げ込み気配をうかがっているような姿を見せるらしい。
また、蜥蜴は樹高2メートルくらいまで登ることがあるらしいが基本は低いところを徘徊する傾向があり、近年のブロックやコンクリート塀が増えると群が分断されて絶滅の危険性があるとも。生態から、金蛇はこうしたリスクから免れられるらしいとも。
以上はwiki先生の情報でした。
今朝は庭で一瞬見かけたのが今年初めての蜥蜴で、瞬間の残像からあれはニホン蜥蜴だったと思われる。

四面楚歌

醜草をぬきんでて揺れ美人草

雨上がりの涼しい日を狙う。

思いたって庭の草を刈ることにした。草引きではなく、鎌でざっと刈るだけである。
今ごろはポピーの時期なのだが、今年は雑草に負けそうになりながらも辛うじて息を吸うように頭一つ出て揺れている。いったい何時から、あるいは何処から種が飛んできたのか分からないが、毎年増えているように思える。抜いてみるとしっかりとした、牛蒡のような直根なので多年草と思うかもしれないが一年草である。
一般にはポピーだが、歴とした和名がある。
雛罌粟ひなげし、別名・虞美人草(または美人草)である。こう聞くと、由緒ある高貴な花というイメージに一変してしまうところが面白い。項羽の寵姫・虞の死後、墓のそばから咲いたのでそのような別名があるわけであるが、垓下の戦いに破れ、しかも周りの漢軍に楚の国の歌を歌われて心理的に大きなダメージを受けた楚国の英雄の悲嘆にストレートに響き合うものがある。

恨み言

南風はえの雲遠く吉野の峰にかな

生暖かい南風が吹く一日だった。

今にも降り出しそうに見えて降らない。一日を損した気分だ。
雨の予報もあり、今日の予定をすべてキャンセルしたのが間違いだった。
雨の本番は今夜未明らしいと分かって、もっと早くそう言ってくれればと恨み言ひとつも言いたい。
吉野の方の空を見ると、峰峰に雲が筋を引くように流れ込んでいる。まるで梅雨のようである。

山膚

平群谷出づる峠の懸り藤

これは霾ぐもりというべきか。

初夏の陽気に遠い二上山はじめ青垣に靄がかかっている。
午後三時の気温が三十一度。真夏日である。朝方こそ長袖をはおっていたが、日中はTシャツ一枚で十分である。家にいるときは靴下だって暑苦しい。
今日はホームセンターのはしご。この店にないものはあそこで、あそこにも無ければまた一軒。
目当ては農業資材だが、ワークマンが近くにあったのがブレークして以来小さな店は畳んでしまったようで、ホームセンターの作業パンツで間に合わせることにもした。吸汗速乾。これはいい。今まで何本かのGパン、綿パンでやっていたが膝がずいぶん薄くなっていつ破れるかというぎりぎり。
昨年までは会社の作業服がしっかりしたもので重宝していたがさすがにもう限界。長いオフィス勤めから馴れない工場勤務に変わった思い出の上下だがおさらばである。
山の藤が見事な季節となった。サングラス越しにもくっきりと藤色が山膚に浮かんでいる。桐の花も今頃はさいているであろう。

力量

ふらここの銀の鎖を雨雫

冷たい雨だった。

二十度近くになるという予報だったが、肌で感じる気温は十度台前半。
こうなると何もできない日曜日。何もやる気がおきない一日だった。
ここのところ立て続けにご恵贈いただいた句集をあらためて繰っては、作者の力量にうなづくのであった。

一堂に会す

明日よりの日和たのみて胡瓜植う

菜園仲間一同が集まった。

週末ということでサラリーマンファーマーも加わり久しぶりの賑わい。見ればみなさん夏野菜の苗を携えておられる。一様に夏野菜トリオともいうべきナス、胡瓜、トマトである。
ゴールデンウィークより一週間も早いタイミングである。苗屋に「今年は暖かいから苗は早く売り切れる」と言われて買ってきた人もいる。
私の方は順調なトマト苗の定植を連休目途にしているので慌てることはないが、皆さんの満足そうな顔を見ているとこれぞ家庭菜園の醍醐味であると思えてくる。
コメントをいただく渓山さんは夏野菜のベッド準備完了したとのことだが、当方本日、西瓜、トマトの畝の準備がようやく整った段階にすぎない。まあ、のんびりいくとしましょう。

因みに、「胡瓜苗」「胡瓜植う」は夏の季語。茄子も同様である。