景広く

二上山に開く病棟日脚伸ぶ

病棟に動けないでいるとよけい感じるらしい。

今日はまだベッドから起き上がる許可がおりないで、仰臥したままくくりつけのような状態の家人からLINEが来た。何もすることがなくただベッドに寝たまま時をすごすしかない身には、曇りがちでもそのように感じるのは自然なことだろう。
病棟から遠く南西に二上山があり、南面する窓からはなんの障害もなく夕日が二上山のあたりに沈むのをじっくり眺めることができる、なかなか景の広い眺めである。
むろん家人にはそんな感傷的な気分には到底なれないだろうが。

実用的

マフラーの巻き方ちよいと変へてみる

今日もまた強い風。

首筋へ冷たい風が吹き込むとなお寒い。
テレビでスカーフの結び方をやっていた。これを真似てマフラーに応用してみたら隙間なく首を包めて暖かい。
今風の結び方と言おうか、意外に実用的である。
手術の日であるが、予定開始時間が大きく狂ったようでその後どうなったかつまびらかでないが、時節柄病院に問い合わせるのもはばかれ、本人の麻酔が覚めればLINEで何か言ってくるとのんびり構えている。

面会不可

病棟へ妻を届ける雪催

面会不可と言っても病棟のエレベータエリアまで許される。

荷物はそこで看護師を呼び託すことになる。
今日から約一週間のやもめ暮らしである。
初日は無難にきんぴら牛蒡やらサワラの西京焼きやら、味噌汁もうまくできた。
猫どもも相方がいない夜は調子狂うのか、おとなしくしている。
室温は15度を切っているが体を動かしているせいか寒くはない。
あとは風呂に浸かって寝るだけだ。

反転

日脚伸ぶ雨後の夕の空青く

朝からずっと冷たい雨。

午後も暮れる頃にようやく止んだがどこか明るい。陰の極みから反転して日はたしかに伸びているようだ。
暗い一日だったがすでに気持ちは春に向かっている。

団欒

忘れもの送り届ける初便り

早いものでもう十日。

家人の入院まであと二日。
猫四匹+外猫1匹の面倒と自分の面倒。考えると憂鬱になるが、いざそうなるとあっという間の一週間になるのは分かっているので、最初の二日ほどのダッシュが大事。あとはいきおい買って一気に。
おそく帰省した子もあわただしく帰ったせいか忘れ物したと。郵便で送り届けたけど、これも思い出になるのだろう。
今年はほんとに久しぶりの家族団欒の正月で楽しかった。また元気で会えるといいな。

放射冷却

ハンドルの霜の厚さを拭ひけり

今朝の霜は厚かった。

原付バイクのメーターボックスがすっかり覆われて文字盤がまったく見えない。
指でなぞるだけでは除けないので、こするようにして掻き取ってようやく文字が見えてきた。
厚さは2ミリ以上はあったろうか。
さいわい外の水栓が凍るほどではなかったが、残った野菜たちが霜でげんなりしている。これでまた少し甘くなるかもしれない。
日があがるにつれて気温がだんだん高まり、風もないとあって久しぶりの穏やかな冬日である。
典型的な高気圧による放射冷却の朝だったと言うわけである。
末の子が2泊3日の予定をおえて東京へ帰って行った。
勢揃いすることはなかったが、久しぶりに家族の団欒にひたれた正月となった。
新型コロナが猛威をふるう都会でも負けずに頑張ってほしいと祈るばかりである。

先客

変声期越えてそつなき御慶かな

年があらたまってやうやく穏やかな日に恵まれた。

空青く風もなく少し歩けば汗ばむほどで菜園にまで足を延ばせば先客がいるようだ。
シェア畑の仲間であり、年齢も近く、おたがいの作物の物々交換したり気のおけない人たちばかりである。
今年最初の顔合わせでどちらともなく歩み寄って年頭の挨拶を交わす。
今日はさっそく立派な青首大根をいただいた。
やはりおでんかな。