昭和にはありし社紋の秋扇
羽振りをきかせた会社の扇子をいまだに持っている。
古い鞄にしまったまますっかり忘れていたのを偶然発見したものだ。
よく見ないと分からないほど幽かな企業ロゴが隅に印刷されているだけの簡素なつくりだが、かえってそれが老舗の気品をたもっているようにも思えるのだ。
めざせ5000句。1年365句として15年。。。
昭和にはありし社紋の秋扇
羽振りをきかせた会社の扇子をいまだに持っている。
古い鞄にしまったまますっかり忘れていたのを偶然発見したものだ。
よく見ないと分からないほど幽かな企業ロゴが隅に印刷されているだけの簡素なつくりだが、かえってそれが老舗の気品をたもっているようにも思えるのだ。
禅寺に秋蚊打ちをる在家かな
気温が急降下して蚊がおとなしくなったようだ。
どこか弱々しく、簡単につぶすことができるようになった。
唐招提寺では、高名なお坊さんが弟子たちに殺生を戒めた故事から有名な「団扇まき」の行事が生まれた。
修行の徒でもなく俗世の人間としては、まるで親の敵のように蚊や蝿、ゴキブリの類いを追いまわしているが、せっかくの貴いお詣りも不信心なことである。
足湯して虫聞く夜とはなりにけり
足湯して湯舟にしずむ虫の夜
足湯して首まで浸かる虫の夜
昨日今日と急に季節が進んだ感じで、体温に近い温度にしておいた湯舟はさすがにぬるい。
今夜から冬にかけて徐々に設定温度を上げてゆくことになる。
それにしても、虫の声が聞かれないのはどうしたことだろう。
いつもの年なら、湯舟で虫たちをBGMにゆっくり手足を伸ばしていたものだが。
外へ出れば、隣の空き地からはかすかに聞かれるが、家の中にいてはまったく聞こえてこない。
虫たちにとっても苛酷な夏だったろうが、遅生まれの子たちが戻ってきてくれたらいいがと思う。
番傘の出待ちかきゆく勝相撲
阿炎と言うのは若手だが、なかなかの人気力士である。
今日は四股のきれいな同志の遠藤との対戦。
長いリーチを活かして、遠藤をものともせずあっというまに土俵下に突きだしてしまった。
どうだと言わんばかりに胸を反らせて、力水をつけたかと思ったら、特注の番傘(蛇の目かもしれないが)をかざして大雨の国技館を後にしたそうだ。
ビニール傘で済ますお相撲さんもいるなかで、遠藤の蛇の目、番傘も粋だが、阿炎というのもなかなかの洒落者のようだ。
休日の会議延々今日の菊
休日なのに要領の悪い会議が延々とつづく。
老害極まれり。
どうでもいい話は上の空。そう言えば、今日は重陽の節句なんだなあとひとりそんなことを頭に浮かべている。
桔梗の遅れて咲ける一二本
雨雫堪えてしまひの桔梗かな
とっくに花の期間は終わったと思っていた。
早ければ初夏から咲いて、八月にはほとんど終了するのが普通なので、まるで狂い咲きのように一本、二本とぽんぽん風船が膨らんできたのには驚いた。
ただ、可哀想なのは、咲き始めてからずっと雨で首を垂れていること。しかし、雨の露をのせているのもある意味風情が感じられて悪くはないのだが。
共稼ぎ所帯の垣の牽牛花
朝顔は昔、牽牛子(けんごし)といわれる種から薬をつくる植物だった。
だから、牽牛花(けんぎゅうか)ともいう。
昼間、子供を保育園に預ける共稼ぎ所帯では花の盛りを見ることはない。
かわって、隣人が毎日楽しませてもらっている。
先日の台風では支柱が倒されたが、株は無事だったようで、以前と変わらず毎日フレッシュな桃色の花を咲かせている。
おかげで来年も牽牛子からたくさんの花が咲くだろう。