結氷

池底に積むもの透ける氷かな

氷の上を落葉が走ってゆく。

酒船石に刻まれたような模様をした流水装置から落ちる水は凍ってないが、それを受ける大きな蹲踞のような小さな池は凍っている。池の底には落葉が溜まっていて、ここ数日の寒波でそれらを閉じこめたまま凍ってしまったようだ。
さながら夏の花氷のように、内部が透けてちょっとした造形である。
幼児が氷に触れたくて池に下りようとするが、水面までが遠くてもどかしそうに見ているしかない。

ランデブー

上弦のつかずはなれず寒昴

冬の星の代表はオリヲンだが、昴もまたいい。

高度はより高く、首を真上に伸ばさないと見えない。
この二三日は中天あたりで、ちょうど上弦の月と仲良くランデブーしているように見える。
凍星、寒星、荒星。
どれも冬の痛々しいほど怜悧な星の輝きを表している。

オリオン冴ゆ

生駒嶺を越えて凍雲尾を引ける
凍雲の昏き底よりJAL機かな

抜けるような空。

耳が切れそうな空気である。
飛行機雲が縮れて薄く広がり、その先に冴え冴えとした昼寒月が中天にかかっている。
生駒から黒い雲が伸びたかと思えば、伊賀の方へ流れてゆく。東山中を通れば雪を降らせるようかである。
いっぽうの葛城と言えば、相変わらず雲の流れが乱れて里に雪時雨をもたらせている模様。
今日は鳥もひっこみがち?
コゲラ、アオジ、エナガ、四十雀、ツグミ、白ハラ、ベニマシコ、水鳥いろいろ、おなじみヒヨドリ、カラス。

夜は夜で、オリオン、昴が頭上にキレキレである。久しぶりに冬の夜空を見た。

説得力

顎マスクせし内科医のタバコ臭

問診を受けていて、息に煙草の匂ひがしてくる。

外来禁煙を謳っている医者である。
まさに医者の不養生であろう。
酒と煙草は慎むようにと言われても、説得力がない。
心筋梗塞を未然に発見してくれた恩有る医者だから、まあ大目に見ておこう。

生駒夕照

テレビ塔七基の日脚伸びしかな

どちらが言うともなく窓の外を見る。

午後5時となってもまだまだ明るい。
5時半を過ぎてようやく暮れなずんできた。
生駒山に夕日がさして、何基かあるテレビアンテナが輝いた。
外から戻ってくるとき南側から仰ぎ見るのが楽しみだが、なかんづくこの時期の景色が大好きである。

地味がいい

登坂路に息整へて冬椿

詫助なんだろうか。

足下ばかりに気がいって今まで気づかなかったが、いきなり眼前におびただしく椿が落ちている。潔いくらいの白である。花片は小さく、あまり開かない。そのかわりに、全体の大きさのわりに蘂がやたら大きい。
あまり人が通らないらしく、踏まれずに、汚れずにいるのがいくつもある。
見上げると、木の高さは3メートルくらい。大きな木に囲まれているので、せいいっぱい背伸びをしたのだろう。
人の踏む道にかぶさるように枝が伸びていて、ちょうどトンネルのようである。
しばらく行くと、また同じような椿に出会った。
地味な椿って意外にいいものだなと思い直した。

巨木の陰

寒林の疎林なれどもみな大樹

上へ上へ競ったのであろう。

どれもみな背が高い。高いものどうしが生き残って見上げるような森を形成した。
背の高いものが生き残れば陰になる幼木は育たない。こうして疎林となったのであろう。
高い木に止まるのは、鳩、カラスくらいである。小鳥は集まらないのでつまらない。
今日目撃したのは、ツグミ、ヤマガラ、メジロ、コゲラ、四十雀、ベニマシコ、ジョウビタキ、シロハラ、水鳥各種など。