夏バテ知らず

思はずも時計見上ぐる昼寝覚

二時間近く寝たことになる。

外気温と室温の差は八度くらいか。
じりじりと灼けてくる外に出る用もなく、何するとなく座っているといつの間にか眠りに落ちていたようである。
昼寝は短時間がいいと言われるが、もともといったん寝るとなかなか目覚めない質なのでこれはどうしようもない。
夜は夜で寝付けられないということもなく、しっかり寝てられるのが夏バテしない要員かもしれない。
しかも暑くても食欲はしっかりあり、とくに昼は冷たいものでももりもり食べているのも体力維持に一役買っているのだろう。
夕方には一時間ほど畑で過ごし、一汗かけば昼寝による胃もたれも解消。
ばてることなくこのまま酷暑を乗りきっていきたいものである。

身にも心にも

罪悪感どこ吹く風の昼寝かな

ここ最近昼寝で眠り込むということがなくなった。

これまでは一度寝てしまうと二三時間は起きられなかったのが、せいぜい一時間、今日など10分ほどで目覚め、しかも寝覚め感すっきりと実に健康的。
ちょこちょこと庭仕事したり、夕方は決まって畑へ。畑仕事というのはもうこれでいいということはなく、あれこれと仕事が出てくるものだが、それもまだ暑さが本格化してないからであろうか。
ひと月遅れの夏野菜、苗が相当老化してしまったので活着できるかどうか大変心配だったが、いまのところ無事でいるようである。植えてから一週間ほど雨が来てないのでよく踏ん張っているものだ。
明日は朝から日中雨の予報。まさに慈雨。これほど雨が待たれることは少しも苦にならない。緑に親しむのは身にも心にも心地いい。

寝つき

寝つかれぬ昼寝てふもの聞かざりし

三時頃になると決まって眠くなる。

クッションを枕に畳に寝転べばあっという間に昼寝の園に落ちてゆく。
今日の句は川柳みたいなものだが、寝つかれない人の愚痴はよく聞くが、昼寝で寝つきが悪いなんて話は聞いたことがない。

段ボール箱の空気枕

アマゾンの函を枕の昼寝かな

眠くなったら近くのものを手当たり次第枕にする。

手に届くものがなければ、文字通り手枕で。
ただ、夏はこのやり方はさすがに肌と肌とが触れあってべたつくので気持ち悪い。
アマゾンというのは、何でもかんでも空気をたっぷり詰めた函に品物を梱包してくる。何とももったいなあと思うばかりだが、作業の標準化やら、効率化、宅配業者の便宜などのためにこの方式を採用しているのだろう。
たった一冊の本でもそれなりの厚さの函になるので、これがちょうど昼寝の高さにいいのだ。段ボールでできているうえ、中が空洞だから熱がうまく逃げて枕にはかっこうの材料となる。
ただ、人間の頭というのは体重の一割ほどはあるというから、その重さをうまく支えるように箱の角や稜線をうまく使う必要がある。
寝返りを打てば外れてしまうから、長々と寝てしまう傾向にある筆者には適っている。

俗説

半日を棒に振ったる昼寝覚

ちょっとのつもりが、何時間も寝ているときがある。

二日続きの好天で、今日も外ではやることが山ほどある。
午前中の涼しいうちにと動き出したが、日射しがほんとに強い。麦わら帽、水もたっぷり飲みながら、汗もだくだく。
昼からは、久しぶりに窓を全開して一休み。のはずが、いつの間にか眠っていたようだ。

ここ最近はちょっと動いただけですぐに体がいうことをきかなくなる。
睡眠も8時間以上ないと体が動かない。
年寄りは早起きだというのは俗説に過ぎない。

依然夏バテ

痩身の脛を蟻這ふ昼寝かな

機密性の高い家でも蟻は入ってくる。

玄関ドア、窓枠など完全密閉では開けることができないだろうから、僅かの隙を狙ってくるのだろうか。一番可能性が高そうなのは、窓を開けているときで、サッシの溝からの侵入であろう。
大挙して入ってくるのではなく、斥候部隊として密偵が忍び込んで餌になりそうなものを探しているに違いない。
猫どもも蟻くらいでは騒がないようで、気がつけばすぐ体のそばを通り過ぎてゆくときがある。
夏バテの昼寝のあとに、蚊ではなく蟻に噛まれたような跡を見つけることがある。

挙げ句が掲句に

押売の来意に覚める昼寝かな

こう暑いと昼寝が欠かせない歳になってしまった。

短時間ならそうでもないが、いったん寝ると熟睡する性質のせいか多少の罪悪感はあるものの誘惑には勝てないし。
一応枕元に句帖やら文庫本などを並べてみるが、ものの十分もしないうちに深い奈落の底に沈んでゆく。

ここ数日などは湿度が低いのでエアコンの助けもいらず、扇風機の風で十分快適に眠れているが、好事魔多し。
チャイムに起こされてドアフォンに出てみると、太陽光発電はどうだとかこうだとか。挙げ句が掲句である。