インバウンドもいいが

袋角ふりたてねだる仕草かな

東大寺は修学旅行シーズンハイである。

ぽっこりと角が生え始めた鹿が煎餅をねだる仕草がまるで挨拶するようだと、ツーリストとくに海外からの観光客に人気で、スマホかざしながら鹿と戯れる光景があちこちに見られる。
インスタグラムとか自撮りに夢中で、なかなか煎餅がもらえないと業を煮やしてツーリストを突き飛ばす事故も多いらしい。
見ていると長々と挨拶させているのはたいていアジア人、それも中国系に多いと見た。
これからは子鹿のシーズンでもあり、ナーバスになっている母鹿とのトラブルも増えると聞く。
インバウンド効果もいいが、あくまでも野性の動物であることを周知、呼びかける活動を保護団体任せにせず、自治体、観光協会なども積極的に関わってゆく必要がある。

規制したらどうか

ふるまちの路地をせましと袋角

観光客が増えるのは喜ばしいが、鹿にとってはは少々迷惑なことも。

奈良に来る外人観光客のある部分のひとたちは鹿が目当てであるようだ。煎餅をおねだりして首を振るのが可愛いと、鹿をじらせたあげく怒らせて怪我をするという話が多い。
ちょっとしたことにも臆病な鹿たちは、ときに町に集団で逃げてくることもある。
狭い路地を鹿たちの群れが走るさまを想像してほしい。あれでは、出会い頭の事故などがあとを絶たないわけだ。年に百頭ほどが事故死ないし大けがを負っている。
スピード規制らしきものがないのもおおらかな一面、奈良公園周辺の渋滞なども鑑み時速20キロ、ないし徐行を義務づけしたらどうだろうか。そのために渋滞がさらにひどくなるのなら、パークアンドライドなどを本格的に検討する時期に來ているのかもしれない。京都の二の舞にならぬためにも。

袋角はおとなしい?

袋角鹿の子模様のうっすらと

奈良の鹿は相変わらず観光客に大人気。

ちょうどこの時期袋角が出始めて二段目までを形成中。なかには二段目の先が分岐し始めて三叉になりそうなのもあって、最低でも4才と分かる。聞くところによると、鹿の角の分岐は四叉までだそうで、そうなると5才以上の証明となるらしい。
なかには、まだ幼い袋角で、体側をみるとどことなく鹿の子模様が残っていそうなものもいた。
袋角の時期の鹿は、秋の繁殖期に比べると心なしかおとなしいような気がする。体をぽんぽんとたたいてみても何の反応もない。煎餅を持つひとを追う仕草もどこかのんびりとしているようだった。
ただ、袋角を触わられるのはさすがに嫌がるみたいで、するりと逃げられてしまった。

信貴山縁起絵巻展へ

ツーショットぬっと割り込み袋角

帽子の色からすみれ組さん、たんぽぽ組さんの幼稚園児。黄キャップ、青キャップの小学生。

幼稚園児と小学生の列が併走するように登大路を上ってゆく。
その先の奈良国立博物館では、この週末で「信貴山縁起絵巻展」が終了するという。全三巻同時に見られる機会は当分ないだろうからと、今日の涼しい日を待って出かけた。

あらかじめテレビ放送があったのでよけい興味がそそられたのは、当時考えられる一級レベルの絵で、これだけの腕を持つ絵師に思うたけの腕を振るわせることができたのは上流社会の者に限られ、それは当時のトップ権力者(後白河)に他ならないだろうと聞いたことである。
そんなことを頭の中に入れて拝見していると、随所に人間らしい従者、庶民が生き生き、伸び伸びと描かれていることから、時代の自由闊達な空気も感じ取ることができるのだった。

見終わって外へ出ると、博物館前の鹿たちは煎餅をたっぷりと食べたせいか実にのんびりとしていて、観光客の持つ案内図を奪ったりの悪戯をする余裕も。袋角はすでに十センチほどに伸びて、二叉に別かれかけたものも。

奈良公園は走行注意

鹿苑を吹き行く風の梅雨きざす
枝なしつあるといへども袋角
袋角早きは枝をなしつあり

今日は奈良公園方面の吟行。

予定の万葉植物園に辿り着いたら何と今日は臨時休園だと言う。
遠目にも「花菖蒲開花」と大書した看板が立っているのにである。
このあと鹿苑の子鹿公開まで1時間以上間があるので、急遽春日大社本殿(造替工事のため神さんは留守だが)の特別公開に向かったが、信心の浅い身には拝観料千円はあまりにも高く踵を返して参道を彷徨う羽目になった。

鹿苑の入り口の子鹿誕生データによると、今日まで鹿苑で18頭、公園全体ではこの倍以上の子鹿が生まれたようで、今年は全体で200頭の見込みだという。
一方で100頭あまりが毎年交通事故で命を落としていると聞く。奈良へ車でお出での節はぜひスピードを落として注意して走行願いたいものだ。

発展途上

袋角先丸くして途上なる

冬に抜け落ちた鹿の角は、初夏になると新しく生え始めこれを袋角という。
鹿の袋角

袋角は成長中なので角質化した角とは違い、内部に血が通う皮膚で覆われているという。たしかに、近くで見るとカブトムシの甲羅のような茶褐色をしていて、表面全体にうっすらと産毛が生えている。当然発情期ではないので、雄どおしが角突き合わせることもなく傷一つないいかにも柔らかそうである。

幼子は子鹿に寄られ色をなし

親子一緒に楽しく鹿を見ていたのに、3歳くらいの子にいきなり子鹿が近づいてきて餌をねだるので顔が引きつってしまったようだ。