新涼や母は少女の世界にて
一緒に暮らしてみてはっきりと分かったのだけど、認知症は思ったより進んでいた。
元気がいい日は寝ないように頑張っているので、その間は家人が話し相手を務めねばならない。
毎日毎日、子供の頃の話の繰り返し。そのかわりここ数年どころか、今日のこと、さっきのことまですっかり記憶から消えている。辛抱強く相づちを打ったり、話題を変えてやったり、なるべく辛いことから遠ざけられるように。
今朝は25度を切り随分涼しかった。
そのせいか今日はとくに元気がよくて、朝から心は少女時代に遡っていた。