矢切の渡し

着岸に手間取る渡し菜花東風

今日の風は冷たかった。

ただ、周りを見渡すと山には芽吹きは始まっているし、朱雀大路の柳が遠目にも芽吹いているのが分かる。
気温も10度を下回らないので、出歩くにはちょうどいい具合かもしれない。

今日の風から連想して、今日の季語は「東風」だ。
陸ではたいした風ではなくても、海に出たり、広い川に立つと意外に風は強いものだ。
10年ほど前に水元公園から柴又方面へハイキングしたときもそうだった。
江戸川(だったか)を渡る「矢切の渡し」は健在で、野菊の墓の舞台となった対岸に渡るときに利用したが、強風にあおられて船足もおそく、着岸にも慎重だ。
渡りきった対岸には田園が広がり、菜の花畑も広がっていたように思う。
「東風」の頭に言葉を冠して、例えば「桜東風」「鰆東風」なども許されているので、「菜花東風」も許されようか。

日食残念

春塵のベンチに始発電車待つ

冬の間人影もまばらだった公園に人が戻ってきた。

しばらく使われなかった遊具やベンチはどこか埃っぽい。
高架の駅のホームも、昨日の荒れた天気の余波かベンチにうすく埃が積もっている。

春埃ではなく黄砂が舞うような日なら、太陽だってかすむだろうけど、今日は生憎の雨で日食は見られなかった。次は3年後だという。

陰影

春障子学芸員の声洩れて

障子の中では古代雛の展示が行われている。

法華寺では、歴代門跡の雛人形が公開中だ。
普段非公開の座敷は広く、明かりは乏しく障子からのものに依存しているので、それほど明るくはない。柔らかい光が人形の表情に陰影を与えて、雅な印象を深める。
何か聞きたいことがあれば、縁側に正座した学芸員とおぼしき人に聞けばいい。
ここでも、雛の調度が特徴的で、ほかには幼い庵主のために用意されたとおぼしき人形や遊び道具なども展示されていて、普段うかがえない尼寺の暮らしをかいまみることができる。

溜息をついたのち、外に出れば庭園は椿が咲き誇り、囀りが絶えない。
敷地が広いこともあって外からの雑音も届かず、見学の余韻に浸りながらの散策にはちょうどいい。

フットプリント

斑雪野の獣の跡の痩せにけり

大峯の襞がかすかに見える。

西から夕方が当たるときだけしか見えない光景だが、それでもいつもの年に比べてクリアではないのが残念だ。明日は花粉に加えて黄砂まで飛ぶと言うから、もう今年は期待できないかもしれない。
空が澄んで吉野・大峯の山襞がくっきり見えるときの感動というのは,言葉にはできないくらい神々しく輝いて見えるのだが。

修行の山はまだ雪に覆われているが、麓では斑雪野が見られることだろう。
そんな様子を思い浮かべて作句してみた。

馬鹿陽気です

春色の故郷フェアに訛聞く
春色の恵みとりどり故郷展

南天さんから、「夏井いつき句会ライブ」の報告をいただきました。

3月3日だったといいますから、当日の席題は雛祭りに因んだものだったのではないでしょうか。
会場が三重県のアンテナショップなので、もしかしたら会場では故郷の訛が聞こえたのかもしれません。

その場に居合わせなかったので適当に詠んでますが、出席した方からはもっと迫真の句が生まれることでしょうね。

春にアクセル

啓蟄や居所悪き虫ひそむ
啓蟄ぞ出や獅子身中の虫
啓蟄や飛んでけ苦虫腹の虫

これだけ暖かければ虫も飛んで当然だろう。

花はもういっぱい咲いているし、餌にも困らない。
その這い出た虫を狙って鳥も飛ぶ。
腹が満たされれば,次は恋だ。
子供たちが生まれてくる頃は春真っ盛り。

春がいよいよ加速されてゆく。

今日はどこ歩く

踏青の終点しかと決めで行く

天気に誘われて行けるところまで行く。

平城京跡を歩いていると、余りにも広いうえ、朱雀門、大極殿などポイントポイントが離れていることもあって、出口をどこにしようか迷うことがある。
冬ならば、北の池で渡ってきた鴨を見もよし。春ならば、佐保川にでて桜堤を歩くのもよし。夏ならば。。。。影のない夏は避けた方がよさそうだ。秋は、う〜ん、秋篠寺の技芸天さんでもお詣りしましょうか。