勸請縄のある集落

畑打つや信貴畑しぎはたといふ山の腹

生駒山スカイラインという道路は早くあるが、その生駒山地の少し下ったところに立派な農道が走っている。

信貴山中腹から平群元山上口辺りを結びフラワーロードと呼ばれる比較的新しい道路だ。
平群町は小菊の産地で、山の畑でも小菊が盛んに作られているのだろう。
菜園から顔を上げると、古くからある集落・信貴畑の一画が望める。歩けば自宅から30分ほどで着くだろうか。信貴山奥の院、あるいは信貴山頂へぬける道があり、生駒線竜田川駅と信貴山口駅を結ぶハイキングコースでもある。人がなぜこんな山の中腹に集落を作ったのか分からないが、勸請縄があることからも相当古い集落であるのは違いない。
平群の集落とは距離を置き、何世代にもわたってここに畑を打って生きてきた人々がいる。

草丈

酔狂に花まで咲かせ大根畑

採り残した大根一本。

種を採ろうというわけではないが、5月の夏野菜定植まで間があるので放置しているだけである。
今では菜の花の黄に混じり真っ白な一本が目立つ。蝶も賑わいに花を添えてくれるし、春爛漫の庭畑である。
先日刈ったばかりの草が、この雨で勢いがついたようで大根の花を隠そうとするまで育ってしまった。今月中に二度目の草刈をせねばなるまい。

ノルマ

投げ込みのことり音する日永かな

郵便がこなくなった土曜日。

それでもセールスや教室案内の投げ込みのチラシは届く。
夕方することもなくくつろいでいるとポストに音がある。新聞はもう来たし葉書は来ない日だが各戸をまわる投げ込みだった。伸びた日をめいっぱい使ってノルマをこなしているのかもしれない。

ジェットコースター

一夜さに草丈伸びて春の雨

昨夜雨が降ったようだ。

たいした雨ではないが、それでも心なしか草が一斉に伸びたような気がする。
寒い雨なら地温を下げてしまうのでこうまでは伸びないだろうに、暖かい雨だったにちがいない。昼はそのまま暖かさがつづいて27度にも達する夏日である。これが曇りがちな一日だったからよかったものの、昨日までのような強い日差しがあれば蒸し暑さも加わって苛酷な春の日となったにちがいない。
今夜未明雨があるらしく、その後はしばらく平温に戻るということだが、日々こうしてジェットコースターに乗ったようなゆらぎに翻弄されては身体に堪えるというものである。

Time flies

青垣のけふも霞んで日が暮れて

毎日夏のような日がつづく。

遠景はすっかり霞んで青垣の山々も輪郭が定かでない日がつづく。
視力0.7程度だからもともと遠くはくっきりと見えないのでとくに困ることはないが、やはり春たけなわだなあと思う日々である。
午前と午後とそれぞれ一つづつの仕事をこなせば一日があっという間に過ぎてゆく。
今日は猫どものタワー組み立てで2時間、葡萄棚修繕で2時間。あとは細々とした庭仕事であっという間に暮春の夕暮となった。
心地いい疲労に今夜もまたぐっすりと寝られそうだ。

側花雷

花に寄る蜂に親しみさえおぼへ

いろんな野菜が薹がたって今は花盛り。

とくにブロッコリーなどはスーパーに並んでいるあの大きな花雷を採ったあと、側花蕾という小さな花が節と言う節に咲くので見事なながめとなる。その美しさに顔を近づければ、名も知らない蜂が忙しそうに飛び回っている。
経験からいうと花に群がる蜂というのはこわがらなくていい。たとえ大きな蜂でもスズメバチのようでなければ。蜜を集めるのが仕事だから攻撃的でないからである。
顔のすぐそばで忙しそうに立ち働く蜂たちの羽音を聞くと、自然にすっと溶けこんでいけるようである。

今日も暑かった。日中の作業は避けた方がよさそうである。

人見知り

だしぬけにこの庭に聞く初蛙

今年も生きていたようだ。

短く太く蛙一声が壁に響いた。
草も大分伸びてきてそのどこかにいるんだろうが、居場所は分からない。声の大きさからすぐその辺りにいるのだけは確かなのだが。
そのうちにどこかで姿を見せてくれるに違いない。目が合えばそろそろと隠れてしまう人見知りなんだが。