ふろふき大根

猪口とって女将に一献温め酒

燗酒が恋しい季節となってきた。

歳時記に陰暦九月九日から酒を温めて用いれば病なしという言い伝えありとある。
たしかに、虫の声がいつの間にかしなくなってるし、夜の空気が違ってきている。体も温かいものを求めてくるのだろう。
日本酒はうまいが、熱燗は苦手だ。アルコールが一気に蒸発しているようで、口元を寄せるだけで蒸せてしまう。人肌からちょっと熱目というのが合っている。
夜食べたふろふき大根もうまかった。濃いめの味噌味なら肴にはよく合うと思う。

運動会のおやつと言えば

初物を下げていただく青蜜柑

今年の蜜柑は甘い。

10月の蜜柑というと運動会のおやつという記憶があって、それら初期に出回る蜜柑にはさらにまた酸っぱさを伴うイメージがある。
だから、あんまりこの時期の蜜柑は好きではないのだけれど、まずはいただいたものを仏壇にそなえ、お残りの皮をむいてビックリ。実に甘いのだ。しかも、正月の蜜柑と違って甘さに上品さが加わっている。
この甘さなら一度に何個もいただけそうで、あっという間に果物皿が空になってしまった。

降りてくる

紅葉の報南から来る大和

中学のクラス会へ。

欠席者の近況を返信葉書の近況欄で読ませてもらったが、やはり夫の介護、自身の健康などの理由で欠席も止むをえない状況にあるひとが多いことを知った。鬼籍に入られた人も数名。毎年ある会だが、こうして顔を合わせていられることすら奇跡なのかもしれない。そう思うと、散開となるとみんなの顔をしっかりみながら再会を誓ったのであった。

帰宅して夕刊を見たら、大台ヶ原の紅葉情報。山頂付近はすっかり錦秋の趣。これから紅葉前線は北上しながら奈良盆地に降りてくる。予報では、意外にも今年の紅葉は例年より早いらしい。短い秋を見逃さないようにしなきゃ。

マフラー音

750ccの響乾いて秋の空

十ヶ月ぶりに車のワックスがけをした。

水洗いだけで済ますつもりが、天気があまりに気持ちいいので、車内の清掃、ワックスがけまで一気だ。
意外に疲労感はなく、これも秋晴れのなす技かもしれない。
お向かいのご主人も今日は休暇と見えて、秘蔵のカワサキオートバイを庫から出してメンテナンスに余念がない。
最近はリターンライダーという言葉もすっかり定着したが、子供の手が離れ仕事にも余裕がでて、若いころ親しんだバイクに再び戻ってくる人が多い。ひとつには、バイクの大型化もあって大型免許を取得し直すほどの静かなブームである。
お向かいはまだお子さんが小さく、メンテナンスした日に近所を一巡りするだけのささやかな楽しみに抑えておられるようだ。ただ、マフラーには相当はずんだようで、イグニッションオンしたときの響きがすばらしい。
あと、十年もしたら、バイクツーリングを楽しむ休日になるのかもしれない。

新世界へ

秋晴や父子で就学説明会

来年の新一年生の緊張する日。

今日は父兄も同伴の説明会というか、就学前の健康診断の日らしい。
隣りも、自治会で見知った顔も家の前を通り過ぎてゆく。
自らを振り返ってみるに、私らの時代ではそんな体験をした記憶はない。
入学直前までいろいろ家は転々と引っ越しをしていたせいか、幼稚園にも通った経験はないし、早生まれのハンディもあったのだろう、目立った子ではなかったろうし、友だちづきあいもいない。入学から3年生までの記憶はすっぽり抜けてしまっている。
覚えていることと言えば、虫下しを飲まされた後のまずい肝油ドロップ、そして給食の関東炊きだけ。これは料理レパートリーの少なかったわが家ではお目に掛かったことのないうまい料理だった。
ようやく学校が面白くなってきたのは、転校していい先生に恵まれたことだった。あれこれ役目を授かって、学級でも積極的に振る舞えるようになったし、友だちともおおいに遊んだ。
その後も何度か転校を繰り返したので竹馬の友と呼べる友人はできなかったが、今日までいろいろな友だちに恵まれて、おかげで俳句という世界に遊ぶことも知った。
今日、わくわくしつつもなかば不安な気分で初めて小学校の門をくぐった新就学予定児たちに頑張れといいたい。

年会報

巻頭に寺さん悼み秋の風
秋風や同志また欠け年会報
消息の知れて身に入む年会報

労組専従時代のOB会報が届いた。

専従はつごう六年にのぼり、いま考えても最も濃い日々の連続であった。
そのなかでも、現場を離れた三年間は機関誌編集にたずさわり、いままで触れたことのない世界の人々に接するにつけ毎日が刺激的で新鮮に思えたものだ。
OB会というのは、永年指導いただいた名物編集長を囲む会であったが、先生が亡くなられてから一時途絶えていたのを、メンバーがほとんど職をひいたこともあって復活したものである。
年に一回開かれる会に出席するには、毎回1400字くらいの小文を提出しなければならず、当日は早めに着いてまずはこの会報をじっくり読み、それがまた総会・懇親会の肴になるのである。
欠席のため再開二号が届いたが、巻頭は永年組合、そして参院議員として活躍された故寺崎昭久氏こと通称「寺さん」を悼む追想文である。去年訃報に接したときも驚いたが、こうして再び寺さんの知らない面をうかがうと寂しさがふつふつとわいてくる。
元いた組織は大きな改革もあってとうに無くなっているので、OB会には新入会員もなく先細るだけだが、みんなの近況を読むとまだしばらくは続きそうにも思える。

青い月

宮入の山車庫鎖して後の月

昨日は十三夜。

陰暦九月十三日の月が冴え渡った。
渡御が終わり、太鼓台を蔵に納めれば、いよいよ直来の席である。男どもは八幡さんの境内にブルーシートを敷き神饌の酒を酌む、女どもは絵馬殿で賑やかに。
狛犬の足もとにはまだ青々とした稲穂を供えられ、今年の収穫を感謝する、いわゆる「秋祭り」なのである。
たがいに子供の頃から見知った氏子ばかりだから、座は月が随分高くにかかっても終わりそうにない。
夕からいちだんと輝きを増してきた月は、さらに青実を増してきた。北風も出て寒いくらいの夜。
案の定、今朝は10度くらいにまで冷え込んだようだ。