棒のごときもの

日記いつ果つるともなきブログかな

「日記果つ」、傍題に「古日記」。

一年間綴ってきた日記もいよいよ古び、あと一日の記述を残すのみ。
普通の日記帳なら、手に取って今年のあれこれを思い浮かべ述懐にふける時期でもあるし、年が明けるとインクの匂いも香しい新日記にかわると気持ちも新になるものだ。
いっぽうで、ことブログとなると物として親近感や感慨をもよおすものとてなく、一区切りという感覚も薄くなる。

それこそ虚子の言うように一本の棒のようなものかもしれない。

戦後派も古稀へ

行年や焼跡派去り戦後派も

ニュース、スポーツなど今年の総括的な番組が多くなった。

わけてもしみじみとくるのが、今年鬼籍に入られた人たちのことである。
永遠の処女と言われた女優、一言居士の塩爺はおろか焼け跡闇市派の代表みたいなひとも身罷るようになり、戦後派である同級生もその列に加わるようになった。

戦後70年と言われた年だった。
90歳以上なら大正以前の人。
昭和の人の訃報が増えてくるのも当たり前ということだろう。

子猫カレンダー

古暦休診予定の貼り紙も

日めくりであればあと数枚。

見慣れたカレンダーもあと数日。
早いところではもう来年の新暦に換えられているかもしれない。
家にあるのはいろいろ書き込みのあるカレンダーだが、商店や診療所などではカレンダーと並んで年末年始の営業予定、休診予定などを告知する紙が貼られていることだろう。

さて来年の子猫カレンダーの写真はどんなのだろうか。

かき入れ時

生業の看板よそに年の市

日本三大朝市というのがあるようである。

飛騨高山朝市、輪島朝市、房州勝浦朝市。
勝浦の朝市とはよく聞かぬが、飛驒、輪島は観光としても有名どころで全国版ニュースなどでよく取り上げられる。
年末ともなると、青いシートの下で普段は野菜や魚、お土産品などを売っている店が正月のお飾りなど年の市に早変わりするようだ。
アメ横のスポーツシューズ店などがこの時期だけ蒲鉾、数の子など正月用品を売る店に変身するのと同じようなものかもしれない。

そう言えば、牡丹の時期、長谷寺の門前通りの普段はシャッターが閉まってるような店でも、にわかに牡丹や芍薬を並べる店として営業しているのを思い出す。
場合によっては、これが年間売り上げの大半を占めるまでのかき入れ時かもしれない。

過去の話

冬籠というてもインターネット

急に寒くなってきた。

風も強くなってきて外出がおっくうになる。
今日は終日引きこもり爺だ。
テレビや電話もあればネットもある。
昔の豪雪地帯だって今では車も通う。
自らの意志に反した不可抗力の冬籠もりというのはもう過去の話だろう。

15年の句から(後編)

それでは、続いて今年後半から。

逆縁の墓を洗うて父老いぬ
地に触れて破芭蕉とはなりにけり
外来種混じりて咲ける千種かな
富士の灰ここまで飛びし蕎麦の花
天平の甍あまねく月明り
金堂の御開扉さるる良夜かな
絵馬殿に酒宴となりて在祭
競走馬終の住処の秋高し
外つ国のいざよふ月を待ちわぶる
珈琲の知らず冷めゐる秋思かな

夏はあまり調子がよくなかったようですが、秋は10句に絞るには候補が多くて迷いました。
冬になってまだ満足の句はありません。
やはり、秋はものを思わせる材料が多いということでしょう。

このなかで、自己満足のベスト3は、

1 珈琲の知らず冷めゐる秋思かな
2 逆縁の墓を洗うて父老いぬ
3 天平の甍あまねく月明り

ベストワンの句はある句会に出句された「珈琲」に着想ヒントを得て詠んだものです。中七の措辞が浮かんだときには快哉を叫びたい気分でした。
ベストツーは、墓参の折、ある墓碑銘の享年、俗名からご子息であろうこと、そして建立者名が赤文字、すなわちまだご存命である父(であろう)の心情に思い至って詠んだものです。
ベストスリーは、唐招提寺観月会で足下の最低限の灯りの中で、松林から昇ってきた月にあの金堂の大屋根が照らし出された時の感動を詠んだものです。
材料は目の前にあります。しかし、常日頃から観察の目を養わないとなかなか拾えるものではないということを教えてくれました。

一年を通してみると、これまでに比べて一番実りが多かった年のように感じます。
来年は数えで「古稀」。まだまだ成長できると信じて、ささいなことにも「発見」「驚き」を見出だしていきたいと思います。

15年の句から(前編)

恒例の一年の振り返りです。
前半10句に絞ってみました。

勧請の縄あらたまり寒に入る
晴るる日の一ト日つづかぬ四温かな
探梅の三脚肩にこたへくる
撒餌につひぞ寒鯉浮かぶなし
砂舞へば神のよろこぶ春祭
恋猫の深傷舐めてこともなげ
九十九里の目刺の曰く言い難き
告示日の連呼聞きゐる朝寝かな
花房の小さきは山の栗にして
鮎占の神事に凶の出たるなし

ベスト3を上げるとすると、

1 探梅の三脚肩にこたへくる
2 勧請の縄あらたまり寒に入る
3 花房の小さきは山の栗にして

でしょうか。