シロップ論議

ホットケーキ食べ方談義老ひの友

散歩途中に寄る喫茶店でのこと。

お隣に座ったお年寄りのカップルの会話を聞かずとも聞いていた。何かの会が果てて立ち寄ったと思われるのだが、ご主人を亡くされた寡婦と奥様を亡くされた寡夫の組み合わせのようであった。問わず語りに口を開くのは常にご婦人で相方はときどき相づちをうつだけ。榊原温泉の約束をしていたのに認知症になってしまった友達のこと、ホットケーキのシロップはケーキではなくコーヒーに注ぐこと、などなど。

ホットケーキ(またはパンケーキ)の季語は冬なんですね。初めて知りました。

今年の句から(後編)

新涼や母は少女の世界かな
耳遠き人に届かぬ秋の雷
駅ひとつ行く毎沈む秋陽かな
猫の子の顔見せるころ夕月夜
病む母は墓参かなわず秋彼岸
池の面秋色映えて大伽藍
菊の香や遺影の母は微笑みり
笹鳴きの案内に従ふ山路かな
山梔子の色に出にける思ひかな
木枯らしの行き着く先の飛鳥かな

今年の句から(前編)

今日、明日と2回に分けて今年1年のなかから各10句選んでみます。
なかには手を加えたものもありますが、まだまだ満足できるものはありません。

淡雪の溶けゆくごとく愛猫逝く

窓はなち宵夜の底や沈丁花

花衣異国の言葉を交わし居り

紫陽花の姿勢正しく雨上がる

欠いた歯の愁いそのまま梅雨に入る

この道をたどれば三輪へ麦の秋

陽の当たる当たらぬ日あり向日葵草

一日の汗かききって夕の風

国道は渋滞にして萩こぼる

八月は母と同居で始まりぬ

雪の末路

風花や決断できずに惑ひ舞ふ

妻が窓の外を指さす。

晴れているのに雪が舞っている。信貴山を超えて飛んできたらしい雪が、風のまにまにあちらへ飛ばされこちらに飛ばされしている。ちゃんと雪として降りたかったのに、道に迷った末に大和盆地にまで飛んできたのだろう。

甲高い声

陰に入る里を切り裂く冬の鵙

ひときわ高い声があたりに響く。

鵙だ。こんもりとした林に日がさえぎられ日陰の里には人の姿はない。
しばらく声を響かせたあと、林の中へ姿を消した。

ごろごろ

膝掛けやごまとふ猫が鳴らす喉

膝掛け代わりに猫を膝にだく。

ごまちゃんという虎斑猫で、推定13歳。かつては鳥取りの名人だったが、今ではすっかり野性味も衰え冬は暖を求めるようになった。以前はほだかちゃんがいたので遠慮していたようで、いまではすぐに膝の上に乗ってくる甘えん坊ちゃんで都度ごろごろ喉を鳴らしている。

雨の冬至

何時が日没やらむ冬至雨

今日は終日曇り空、夕方にはとうとう降り始めた。

午前中に正月用に栽培した丹波黒豆の収穫を終え、帰ってからは柚の収穫。といっても花柚なので実はさして大きくない。3年目の株だから10個程度だし、今晩の柚風呂に全部突っ込んだ。
冬至だから暗くなるのが早くなるのは当たり前だけど、曇り空、雨空の日だからいつ日が沈んだのかはっきりしない日だった。