二人分

ルアー飛ぶ汀にひとつ土筆の子
草分けていまみどりごのつくしんぼ

行き止まりにある溜池に自転車が止まっていた。

もしや先客かと近づけば、どうやらルアー釣りを楽しむ人だった。
温かい日が続くので今日こそ顔を出しているのではないかと池の周りをチェックする。
いた、いた。生まれたての頭が青々とした土筆の赤ん坊である。ところどころ兄弟で顔を出した子たちもいるがまばらである。あと一週間ほどすれば一面に生まれてくるのではないか。
袴取りが大変だとクレームが出そうだが、二人分だけいただこうと思う。

指を染める

土筆野やミレーの農婦見るごとく

まだだった。

これで都合二回も空振りだ。
去年から目をつけておいたところはヨモギや茅の芽もまばらに、土筆に至っては全然顔を出してないのだった。
ゆえに、掲句はフィクションの世界である。
ただ、もしも期待通り生えてればそれこそ取り放題と言っていいくらいわさわさと顔を出すはずで、それこそつくしを摘む様は遠くから見ればまるで落ち穂拾いの絵をみるように採っても採っても尽きず、どんどんつぎ前に進んで行くようになるのではあるまいか。
明日からは弥生三月。
土筆の花粉で指が緑色に染まるのも近いだろう。

流れる

つくしんぼ胞子はぢける惚けぶり

触れば胞子がぱっと散る。

もうピークが過ぎた感ある土筆だが、完全には開ききってない群落を見つけたのでダメもと覚悟で摘んできた。
畑への途中、今日も道草。
ウェストバッグには収穫用のポリ袋も入っているので、一握りほどを収めて持ち帰ることに。
天気はいいし、鶯はもう立派な鳴き声を聞かせてくれるし、午後の爽快な時間はゆっくり流れてゆく。

小鉢

わが庭の我が目疑ふつくづくし

買い物から帰って気付いた。

駐車場脇の芝生部分に土筆が頭を出しているのを。
よく見ればほらここに、あ、ここにも、という具合に見つかり、そのうち10本くらいを摘んでみて土筆料理を所望。
夕食には小鉢にちょこんとおすましした土筆煮の甘辛いのを、季節を慈しむようにおいしくいただくことができた

糠床始め

精米の糠積み上がる土筆かな

コイン精米所に糠をもらいに行った。

糠床を作ろうと一念発起したのである。
精米所に先客がいて糠が落ちるのを待つ間、見るともなく辺りを見ると買い物のついでと思われる普段着の主婦が畦道をうつむきながら探している。
どうやら土筆のようだ。
袋のふくらみからはそれほど多くは採れてないようだったが。

はしり

とびとびに土筆ン坊の頭かな
土筆生ゆ護岸工事を免れて

土筆が見られるようになった。

大和川の土手に毎年土筆が見られる箇所があって、散歩の時気にかけていたのだが、数日前何本かの土筆が顔を出していた。その後さらに増えたかなと今日また行ってみると、案に反して数はふえてないようだ。
土筆はまだ走りということだろうか。

駐車場

一菜の足しにならざる土筆摘む

今日の奈良は寒かった。

車のコンソールに表示される気温は5度。
郡山あたりにさしかかったら、生駒山の方から烟ってきて雪が飛んでくる。それも激しくだ。

確定申告を提出するためだが、税務署は県庁の裏手で興福寺、東大寺に近いせいか県立駐車場も混んでいる。よく考えたら、今はお水取り真っ盛りで、その用意をして出かけてくればよかったと悔やんだのだった。