アニバーサリー

パン屑の鎧の下の牡蠣の腸

牡蠣は好物のひとつ。

牡蠣酢もいいし牡蠣の鍋もいいが、やはりパン粉をしっかりまぶしたフライをパリッと囓るのがいい。
中からは柔らかで甘い香りがたって噛めば噛むほど旨味がます。
こうなれば付け合わせのキャベツもうまくて、何回かお代わりしてしまうものである。トンカツの付け合わせのキャベツもいくらでも食べられるほどうまいが、この時期の柔らかいキャベツでいただく牡蠣フライはいちだんとうまい。
五十何回目かのアニバーサリーを僕の好物で祝う夜となった。

国産に限る

牡蠣に振る檸檬も安芸の島とかや

キッチンから海の香りが流れてくる。

今日は久しぶりの牡蠣フライらしい。
添え物のキャベツは畑のもので特別柔らかく甘い。
家人によれば当地では牡蠣はほとんど広島産らしい。
絞りかける檸檬もまた瀬戸内のもの。檸檬はこだわりがあって一度島の檸檬をいただいてからは、もう輸入ものは受け付けなくなった。だから季節はかぎられる。旬の冬から春先くらいしか手に入らないのである。
島の檸檬を絞って、牡蠣フライをほうばる。
肉に飽きたときの牡蠣はことさら旨い。

海の牛乳

牡蠣吸ふて育ちし海を推りけり

齢とともに牡蠣がうまくてならぬようになった。

さいわいにもアレルギーもなく、どんな料理でもいただける。
好きなのは生牡蠣だが、近くの店ではめったに手に入らないのが残念である。
達人によると舌でおおざっぱな産地を当てるそうだが、近年は三陸、広島以外でも頑張っているようで素人には大きさだけでははかれなくなったと言える。
食いしん坊にはうまければどこの産地であろうといいのであるが、産地をイメージして食すると旅の印象も加わって悪くはない。

旬のもの

腕を吊る妻の指図に牡蠣揚げる

牡蠣を塩ももみするところから始まって。

衣を溶きパン粉をふり揚げる。
なんとか揚がったがこれがうまい。やはり素材、牡蠣自体がうまいのである。
畑で霜に当てたキャベツを刻んでこれも甘い。
旬のものをくらう。これが一番いい。

続ける

ミネラルは嘘をつかない牡蠣すする

スクワッド10回。

風呂に入る前に課す。
しばらく続けているが、心なしか体幹が鍛えられてきたような気がする。
寒いとテレビ体操したり、少しでも運動不足を解消したい。
筋肉は嘘をつかないと言う。続けることが大事。

青い炎

牡蠣鍋やカセット焜炉侮れず

ボンベの使用期限が切れている。

ここ何年かは電気のものを使っていたので戸棚の奥で眠っていたボンベを調べると、どこも錆びてないし「問題なしオーケー」ということでテストしても問題なくバーナーが青い炎をあげる。
ガスそのものには変化ないだろうし、容器の問題さえなければ使えるはずと判断したわけだ。
それにしても焜炉は新しく、火力も安定しているし、昔の焜炉に比べるとパワーも増しているように感じたのは意外であった。
鍋が好きな夫婦には、この冬は何度も卓上にのぼることであろう。

さっと潜らせて

肉食わぬ夫婦や牡蠣の土鍋かな

いろいろ付近のスーパーを探すのだが、当地でこれはという肉に出会えない。
ここで肉というのはもちろん牛肉のことだが、たいていは外国産なのである。国産のものがあったとしても品数がなさすぎる。
日本の農に自信をもっていいと先日言ったばかりだが、味や柔らかさとなれば圧倒的に国産の勝利である。
魚がメインで肉は滅多にしか食わないのに、それが固くてまずいものならどうして食えようか。ここは少し値が張っても国産和牛なのである。
妻も豚ブロック肉が売ってないとこぼしている。これはチャーシュウの材料だから私も困るのだ。ラーメンに画竜点睛を欠いてしまうではないか。
で、今夜のメニューは牡蠣鍋となった。
ほんの数秒くぐらせたやつをポイと口に放り込む。たちまち口いっぱいに海の香りが広がる。まさに至福。