冠雪の山はるかにも県境
三重県境にある高見山が遠見にくっきり雪をかぶっているのが見えた。
西側から見ると高見山は三角の鋭い形をしており、いかにも中央構造帯にあるような急峻な面を見せている。
左下から右上にかけて遠くからでもよく見える何本もの陰影が入って、あれはおそらく地層が何層もあるに違いなく、山全体が45度傾げたような激しい運動の跡とみられる。おどろくべき構造帯のエネルギーである。
そばを通りぬけるときなぜだか恐怖を覚えるのは、そういう自然の力が陰に陽に人の心理を操っているとさえ思えるのである。
このような自然に恐ろしいほどに圧倒されるのは、立山横断の旅で大きな山がおおいかぶさるように迫ってくる恐怖を感じたときと似ている。
言い古された言葉ながら、人は自然の前では実に小さいのである。