凍れる音楽

夕照に遊ぶ飛天や彼岸花

実は昨日唐招提寺の観月讃仏会の前に薬師寺に寄っていた。

この期間、解体修理中の東塔の相輪が一般公開されていたからだ。もうだいぶ傾いた日が差し込み、いくぶん黄みがかった空気に包まれた会場で、1300年もの長いあいだにしっとりした緑青がふいた水煙を目の当たりにした。笛を吹いて楽を奏でる天女がいれば、その上を縦横に舞う天女も透かし彫りされてそれはそれは美しい。写真でもよく見る有名な水煙だがほとんどがモノクロなので、実際に緑青を帯びたものを間近にすると「凍れる音楽」と賞された塔のシンボルにふさわしい、すばらしい作品だとあらためて思う。

すっかり白鳳の天女さんの虜になって、満ち足りた気分で彼岸花が咲く道を唐招提寺に向かった。

燭をたよりに

ありがたや国宝三体観月会

唐招提寺で月を見てきた

仲秋の名月の今日、観月讃仏会が行われ御影堂で献茶の儀式を参観。蝋燭2本の灯だけがゆらぐお堂で物音ひとつもせず黙々と進んでゆく。観衆が多いので式はよく見えないものの、一服目は和上に、二服目は月に捧げられたことは分かった。

やがて献茶が終わる7時頃東の空、松林の間から月が昇ってきてここかしこから歓声があがる。
真円に近い名月はこのあと、8年後にしか見られないらしいが、近視乱視に老眼が加わった眼にはどうみても真円に近いようには見えない。しかし、空気が澄んでいるせいかクリアによく見える。いつもの年ならこの頃は秋雨前線のせいでなかなかお目にかかれないことが多いが、今年は久しぶりに文字通り「名月」となった。

また、今夜は拝観料無料で、金堂の国宝三体も夜間に特別ご開帳。柔らかい照明に照らされた盧舎那仏さま、薬師如来さま、千手観音さんが外目にもくっきり見えた。

澄んだ夜空

人通り絶へぬ月夜や犬吠へる

今日は明るい月夜だ。

仲秋の名月は明日だというが、今夜だって十分に丸い月だ。台風が去ってからというもの、空気が澄んでいるせいか今夜の月も透き通るようによく見える。

家路を急ぐ人たちに向かって、近所の犬が今日はなぜかよく吠える。

白い風

信貴に吹く風の白萩揺らしけり

白萩が風に揺れています
目に入るのは青い空に飛行機雲が一本だけ。

今日は台風一過の晴天が終日続きました。夕暮れがかった空をカラスもねぐらに帰るんでしょうか、みな一定方向に飛んでいきます。月が30度くらいの角度に昇ってきましたが、気持ちいいほど真っ白です。もう数日で満月ですね。
さきほどまで吹いていた西風も夕方になるとちょっと落ち着いてきたようですが、日中は涼しくて気持ちいい風でしたので久しぶりにカメラを持ち出してみました。

特別警報

台風や予想進路の人思ふ

昨夜が当地のピークだったらしい。

朝、風は残っていたが雨はほとんど小降りになって、午後からは青空も顔をのぞかせていた。今回の台風は雨台風だったようで、大和川の各支流が警戒水域に達したりして避難勧告も多く出た。
福井、滋賀、京都などでは50年に一度あるかないかの大雨だという特別警報も出て、渡月橋を越える濁流の凄まじさには息をのんだ。これからの秋の観光シーズンを控えて復旧作業も急ピッチで進むのだろうが、台風ならずともすでに今年は全国各地で大雨が出ており、このような洪水は毎年のように繰り返されるのではないかという不安がよぎる。

大型台風

独居してパズルしてゐる野分かな

朝から降り込められている。

日曜日だから、机には向かいたくない。かといって、部屋にいてもやることは限られてくる。読書、あるいはラヂヲ、音楽を聴くことくらい。で、今日はナンバープレース、つまり数独の上級編にチャレンジ。なかなか解けないが、一問に2時間くらいかかってしまうので時間つぶしにはちょうどいい。

34度

水漬く田に動くものあり穂の実る

また夏が戻ってきたような一日だった。

暦ではとっくに秋なのだが、通りかかった田では「田水沸く」といってもおかしくないくらいの暑さだ。奈良地方は34度近くまでのぼったそうだ。散歩道稲刈りの終わった地方も多いだろうが、当地の田はまだ水が抜かれていないところが多い。これだけ暑い日が続いたのでいくら何でも生き延びた生き物たちも少ないのではないかと、目をこらしてみていると微かに動くものがいる。