果実酒にせむと楊梅拾ふなり
日葉酢媛命陵の前でおおきな楊梅(やまもも)の木に出会った。
木の根元を中心に半径7,8メートルくらいの範囲によく熟した実がいっぱい落ちている。見上げると木にもまだまだ実がいっぱいついていて、鳥たちが食べに来ても容易には食べきれないくらいある。
これを果実酒、いわゆるヤマモモ酒にするんだと言って、市内からやってきた親子がいた。
僕はというと、道に落ちてるやつを数個拾って濠に投げ込んでみたら、亀や鯉たちがやってきてたちまちのうちに飲み込んでしまった。
めざせ5000句。1年365句として15年。。。
みささぎの常世と隔て夏あざみ
結界のこちら現世夏あざみ
宮内庁管轄の陵墓は立ち入りが厳しく制限されている。
周囲は厳重な柵が設けられているのだが、神功皇后陵ではその結界に沿って咲いている夏薊の朱紫が鮮やかに目に映った。薊には罪はないけど、まるで現世のあだ花でもあるように。
実は、この句はある句からヒントをいただいたものだ。
当日一番に詠みたかった光景なのに、「結界」という言葉が思い出せなくて時間内にどうしても詠めなかったのだ。ところが披講、選句となって、
結界の外に一輪夏薊
を見て眼から鱗の思いで第一に選句させてもらった。そう、キーワードは「結界」だったのだ。神聖な領域のすぐ外に鮮やかな夏薊。現世のはかなさ。単にそれだけを言うために。
この句から類想の「常世」が生まれたというわけだ。
風なきに沼縄をゆらすもののあり
陵濠の主かぬなはを揺らしゆく
今日は佐紀路の佐紀盾列古墳群を巡って平城京・大極殿に至るコースを吟行するまほろば句会。
このあたりはNHK・BS3「火野正平 こころ旅」の奈良編初日の舞台であった。
最初に、近鉄・京都線の平城駅を降りて緑豊かな神功皇后陵、成務天皇陵、日葉酢媛命(ひばすひめのみこと、第11代垂仁天皇皇后)陵を巡ると、句材がありすぎて選択に困るほどだった。
まずは成務天皇陵前の濠をびっしりと埋めていた蓴菜(じゅんさい)。古語では「沼縄」(ぬなわ)というらしい。花がまだ咲いてなくても葉の形からみて睡蓮の仲間だろうとは思っていたが、名を教えてもらって得心がいった。
その下を亀なのか、鯉などの魚なのか、姿は見えないが何かが葉の下をくぐるのだろう、葉がこちらからあちらへと順にゆっくりと揺れてゆく。
花しゃうぶさそふ柳生の写真展
商店街アーケードの柳生写真展を見ていた。
これは奈良市広報コーナーで、訪れる人に向かってときどきの耳より情報を発信しているようだ。
柳生といえば誰でも剣豪の里のイメージを思い浮かべるだろうが、実は今頃が満開の「柳生花しょうぶ園」があることでも知られている。昭和60年に開園されたというから30年近い歴史があり、今では460種約80万株あるそうで規模としても有数だ。
小学生の遠足定番「あやめ池遊園地」が10年ほど前に閉鎖されたこともあって、この辺りでは数少ないあやめの名所なんだろうな。
サンダルがふみいる老舗土産店
この時期欧米人観光客のほとんどがサンダル履きだ。
朝開店したばかりの土産店、しかもいかにも老舗然とした店で私なら少々構えて入るところだが、ノースリーブ、ショートパンツ、サンダル履きのカップルは何事もないように堂々と入ってゆく。
店の方でも慣れたもので何事も無いように受け入れているようだ。実際、これで店の品位が傷つくわけではないだろうし、何より、買いそうな客かそうでないかの見極めは商売柄お手のものであるはずで、そのへんの呼吸は十分心得ているようにもみえるのだが。