きれぎれに瀬音混じりに初河鹿
狼像の前を台高山地を水源とする紀ノ川支流の高見川が流れている。
川としてはかなり上流に位置するのだがこのあたりは川幅も広くゆったりとした流れだ。しばらく散策してみると句材が限りないほどある。
著莪の花が乱れ咲いて沢から高見川になだれ込んでゆくかと思えば、沢水を引いた小流れの底にカワニナが点々とみられ蛍を予感するものがあったり、目の前の貯木場から崩れた材木が河原に散らかっていたり、橋の中ほどに立てばいかにもシーズン最初のような消え入るような、しかしはっきりと河鹿と分かる玉を転がすような美しい鳴き声が聞こえてきたり。さらに、河畔の木の新緑は透けて見えるほどまぶしく初々しい。
川の名前からして目の前にある大きな山はあの高見山ではないかと尋ねる人もいて、新緑の秘境を大いに楽しみながらの吟行第一歩である。ここで30分ほど時間を過ごしたあと、次に句会場の天好園に向かう道は高見山を借景に夏桜が望めるというこの季節最高のロケーションではないだろうか。