卵焼きできそう

鮎刺の砂利に紛れる卵かな

いわゆるコアジサシである。

川や海の近くで子育てをする。
ある年、海の埋め立て工事が完了し、あとは造成地に砂利を載せ地盤を落ち着かせるばかりとなっていたら、野鳥の会から緊急要請があり、子育てが終わるまで工事を控えてほしいと。
もともと豊かな漁場を埋め立てたものだから、コアジサシの好物の小魚も簡単に手に入れる造成地は格好の営巣地だったのだろう。ただ、驚いたことに、現場の飛び立った跡に目をこらすと砂利そっくりの卵があるではないか。巣というものはなく、砂利に直接生んだものだから、親鳥が飛び立てば灼熱の太陽に焼かれる格好になり、そのまま卵焼きができてしまうのではないかと心配するくらいだ。
子育てが終って南に帰れば工事再開だが、巣立った子たちが翌年再び戻ってきても故郷はもうない。

高齢者肉を焼く

緑陰に肉焼くタオル被りかな

昨日は炎天下でBBQの焼き肉担当。

朝早くから準備に追われ、開店は11時。ピークの12時にはコンロの前に長い行列ができて、手渡すにも客の顔も見られないほどバタバタした。
緑陰と言っても、町内の公園だからわずかの木しかなく、げんにコンロの部分はお日様ピカピカ状態。日除けは帽子代わりのバンダナ巻だ。
約二時間の重労働を終えたら、今度は片付け。終わって反省会という名のお決まりの懇親会。
ひたすら体を動かした一日だった。

海老鯛

沖釣りのなぜか外道の鯖ばかり

鯛を狙って出船したのに。

本命はさっぱりで、高価な餌は鯖やフグに食われるばかり。こういうのをこの世界では「外道」という。
お土産にはなるが、この時期は寄生虫が怖いので生では食えない。いきおい、熱を通すしかないが、鯖はやっぱり脂がのった秋がうまい。
何一ついいことないのに夏の季語とはどういうことだろうか。

熱中症寸前

夏帽子ひさし摘まんで会釈かな

今日は大変な一日だった。

ランの棚板が腐ってきたので材料揃えて日曜大工に当てていたのに、スモッグ注意報、熱中症注意という予報。
しっかり暑さ対策して望んだが、それでも何度も木陰に入って休み休み、ペットボトル2lのお茶はあらかた一本飲んでしまうほど。
麦わら帽子風のハットを通して顔も腕もすっかり日焼けてしまった。
夜に入っても顔が火照って、おそらく昼間は熱中症一歩手前まで行ったんだろう。歳を考えると用心しなきゃと思うが、まだどこかで大丈夫だと思っている自分がいる。

通りがかった同じ団地の住民から声をかけられても、帽子を取るでもなく軽い会釈でしばらく雑談。
風もあり、湿度もなかったのが幸いだった。

素晴らしい楽曲家

珍客の電柱来鳴きバードデー

今年の愛鳥週間は終わった。

愛鳥週間はこの時期だけで秋にはないので季語として用例も見られるようである。
探鳥するには木々が枯れて葉を落とす冬がいいのだが、春から夏にかけては鳥たちの恋愛、子育もあり様々な動態が見られることもあってこの時期になったのだろうか。
元は、アメリカで4月5日を「バードデー」として鳥を守ろうとして考えられた活動だそうである。それが、日本にも導入された訳であるが、北の国ではまだ積雪があるということで昭和25年に5月10日から16日のバードウィークに改めれたとか。

ここんところ、前の道路を挟んでせまい区域を、朝から夕までイソヒヨドリがあのオーバーとも言える素晴らしい楽曲を聞かせてくれている。こんな町の中で鳴いたとて雌がくるとは思えないのだが。いったい何のために一日中さえずっているのだろうか。

お似合い

薫風や民の祝意のあまねくに

朗報に全国がわいた。

眞子さまご婚約は、暗いニュースばかりがつづく昨今に久しぶりにかけめぐったおめでたい話題だ。
また、お相手の青年もいかにも爽やかで、だれにでも祝福されるカップルになりそうだ。
これからも順調に次第が整っていくことを願う。

熊野の初夏

黒潮の海士の通ひ路車輪梅
車輪梅一枚岩の御陵とや
車輪梅かつを熊野を通過中

車輪梅を季語とするかどうか。

どちらかというと西日本の太平洋側海岸地帯に見られ、ちょうど今頃香ばしい花をつけるので夏の花には間違いない。
熊野の、伊邪那美の御陵とつたわる花の窟に見られるように、黒褐色の岩石が海岸線に沿って続くのが紀伊半島東部の特徴であるが、それらのあるところはまず間違いなく車輪梅が茂っている。
熊野のリアス海岸地帯にはとくによく似合う。

先日、同窓会の昼食をとったホテルの植え込みが満開の車輪梅だった。それと思われる一枝をテーブルに挿してあるのを見て、たちまち脳裏に熊野の海岸の初夏の景色が浮かんできた。