二上山の闇夜に尖る虎落笛
すさまじい風である。
車体ごと持って行かれるような風にしぜんハンドルをしっかり握ろうとする意識が高まる。
昼前頃からだんだん強くなってフロンドウィンドウを枯葉だのポリ袋だのが叩きつける。夕方にはもう飛ばされるものはおおかた飛んでしまって、フロントガラスを叩くものはすっかりなくなったくらいだ。
飛鳥の小原の里では竹林の孟宗が45度くらいにまでしなって、すさまじい轟音をたてる。対面に見える二上はいつもより山容がすっきりと見えて、この虎落笛は皇子が眠る山への「もがり」の叫びでもあるようだ。
下校中の中学生らが雨が止んでいても傘を広げて自転車を漕いでいるのを見た。どうやら、傘を帆に見立てて風に押してもらおうというらしい。いかにもこの年頃の子なら考えそうな遊びである。
今夜までまだしばらくはこの風は収まらないようである。