介護ベッドこころみ起こす夜の秋
終末期の母が家に来たのは7年前の8月だった。
自宅で最後を看取ると腹を決めて、緩和治療医を近所に探し、レンタルの介護ベッドも用意して、万端整えて迎えたのである。
しかし、エアコンも四六時中効かせたが、もともと昔から暑がりであった母は、しきりに暑い暑いを繰り返した。
これが今年のような炎暑だったらもっと大変だったのは間違いない。
そうこうするうちに秋に入り、目に見えて母の状態が悪くなり、あっというまに帰らぬ人となってしまった。
この二三日、夜だけはいくぶん風が出たりして多少はしのぎやすくはなってきた。
暦のうえでは今年も夏の終わりとなってきたが今月も引き続き暑い日が続くという。あの年の夏が暑かったのどうか、今となってはさっぱり思い出せない。