落葉踏む

朴落葉うちかさなりて風もなし
鞄には収まりかねて朴落葉

長さが30センチもあろうか。

朴の葉の広いこと。
少々の風くらいでは飛ぶこともないのだろうか、白灰がかった茶褐色の裏を見せて巻くように重なっている。
試しに拾い上げてみたら、ショルダーのバッグより大きかった。

主役交代時期

ノルディックウオークの杖に秋惜しむ

明日の立冬の前に、今日はまるで小春日。

風もないし、少し歩けば汗ばむほどの陽気。
鵙の猛り、朴落葉、木守柿があるかと思えば、はやくも笹鳴きも聞かれ、秋と冬の主役交替時期でもあった。
こちらは、句帖片手に句材を探して右へ左へ視線を漂わせ、歩幅も小さくスピードも上がらない横をさっさと追い越してゆく人たち。
いま流行りのノルディックウオーキングというやつだ。
杖が使える場所も限られて、まだ完全に市民權を得たとは言えないはずだが、街中にもどんどん浸食しているようだ。
公園にはお年寄りや小さな子供、赤ちゃん連れのママもいるので、事故がないよう安全に願いたいところである。

エネルギーをもらう

温め酒恩師ほどよく老いたりけり

帰国中の米寿の恩師を囲んでの会となった。

酒は嗜む程度の先生とは、みな遠慮したのだろうか、日本酒、焼酎をオーダーすることもなく数本のビールだけで終わったが、お迎えのメンバーはといえばみな古稀過ぎで、年齢に応じて健康的な酒量だったのだろう。
外つ国の粋な赤シャツを召した先生からは、お国やEUの世情、健康の秘訣など幅広い話題が提供され、時間はあっというまに過ぎてゆく。
今回は二年分の作品を披露されたわけだが、次回またいつになるか分からずとも、帰国されても先生のエネルギーはまたすぐに充填されることは間違いなく、新たな作品に挑戦されることだろう。
われわれもまた、その時には元気でお迎えできるようしゃんとしてなくてはならない。

サービスレベル

延着の会誌ひもとく暮の秋

消印は先月末日とある。

それが今日やっと届いた。都合四日かかったことになる。
同じように、通常なら毎月月頭にくる結社の会報も今日届いた。
いずれも、隣の大阪や兵庫という近距離からの投函だ。
宅配便最大手や通販大手を利用することも多く、だいたいが翌日に到着することが当たり前なので彼我のサービスレベルの差は言葉にならない。
それに、だいいち郵便というものは午前中に配達されるのが常識だという感覚があるので、夕方、へたすると午後6時を過ぎて届くのが常態化しているのにも呆れかえる。
道路を隔てた向かいのブロックには午前中に配達するのを見るにつけ、いったい管轄の郵便局はどうなってるんだと文句でも言いたくなる。

日々是干柿日和

振り分けて縄目緩まず吊し柿
柿すだれくぐり茶飲みの友来たる

西吉野産の百匁柿を干してみた。

大きいものは百匁にもなるという釣り鐘型の柿である。
縄の両端に一個ずつ吊したのだが、その重いこと。
今日で三日目だが、わずかに色が濃くなってきたようだ。
もう少し表面が乾けば、一回目の揉み揉みをしなければならない。こうすることで、早く仕上がり渋も抜けやすいということらしい。
去年もトライしたが、意外にうまくいったので今年も期待している。しかも去年のものより一回りでかい実なので、食べ応えがありそうだ。
十一月は好天が続くことを祈りながら。

分岐点

草紅葉わけても紅きちんぐるま

たとえ画像でもその美しさには十分感動できる。

とりわけ神々が遊ぶという、広大な大雪山の山裾に広がる草紅葉は圧巻である。
頂にまで広がるナナカマドの赤と、絮が風にぷるぷる震える足下のチングルマの葉の赤さとが濃いコントラストをなして声をのむばかり。
観光のリフトを使って大雪山の端に遊んだことはあるが、そこから旭岳に向かう本格的な山登り、トレッキングに挑戦するまでには至らなかった。今になると、あのときもし山登りの魅力を少しでも感じ取れればと思うと、まさに違った人生への分岐点だったのかもしれない。

澄んだ月

絶え絶えと虫の音細き後の月
到来の豆茹であがる十三夜
明日また洗濯日和十三夜
銀に甍かがよひ後の月

夜も引き続き快晴である。

明日もまた洗濯日和という。
十月はすっかり雨の日々だったが、11月に入った途端空の青が戻ってきた。
十三夜の月も冴え冴えと光りを放っている。ちょっと一枚羽織りたくなる夜である。急に冷え込みがきつくなったが、名残の虫も細々と聞こえてくる。
今年はひさしぶりに片見の月とならずにすんだ。とくに何を飾るわけでもなく、外へ出てしばし老眼の目をしばたたかせるだけなのだが。