供華台に位置定まりて花菖蒲
唐招提寺では、僧を除く職員のことをことさら特別な職名で呼ぶことはないそうである。
例えば、東大寺では二月堂修二会における童子などあるが、そういうことは一切ない。
このことは作句する場合にはちと厄介で、単なる「寺男」では勅願時レベルの大寺には何となく不向きだし、誰それがどうした、という類いの句は作りにくいかなと思う。
例えば、掲句だが、これは「唐招提寺」と染め抜いた法被を着た年かさの職員が、若い職員に指示しながら供華台に乗せる花瓶の位置や向きを細かに指示している様子をみたものだが、それをそのまま17文字に閉じこめるのはかなり窮屈になる。
一方で、各お堂への供花を準備しているのは作務衣を着た学僧、作務僧だったので、
作務僧の供華に切り詰む花菖蒲
と誰それがどうしたという風には詠むことはできる。
前者の場合こそ作句力が試されるケースだと言えようか。

