正倉院展

天平のペーパーナイフと緩き冬

入館まで45分ほど行列。

平日というのに正倉院展は大変な人気だ。近鉄奈良駅を降りたときはみんなが奈良国立博物館に向かうのではないかと思われるほど、いかにもそれらしい雰囲気の人の群れ。
だが、瑠璃杯を見た途端息をのむような美しさに人波の疲れなんてたちまち忘れてしまうほど。ポスターに描かれた絵に描いたような杯とはまるで別物のような奥深い神秘的なブルー。当時の貴族たちはこれらを片手に遙かシルクロードからやってきたワインなぞをすすっていたのだろうか。時空を超えていろいろなことを想像させてくれる逸品であった。

ペーパーナイフというのは刀子(とうし)と云われる10センチほどの刀身とそれを装飾を極めた鞘。文房具なのだが腰にぶら下げる装飾品としての性格が強い。小さいとはいえ刀身は完璧な剣のかたちをしているうえ、1300年を経ても錆ひとつなく光り輝いている。

立冬

常よりは長湯してゐる冬立つ日

別に寒いからというわけではない。

浴槽内で苦吟するからである。作句の時間というのはだいたい決まっていて食後1時間ほどしてからだ。おかげで夜のテレビはあんまり見なくなったし、10時頃にはもうやることもなくなって寝付くまではネットサーフィン(古い!)などして過ごす。

衣を染める

山の辺のもみぢの寺や衣染む

四十九日法要をお願いに三輪の平等寺さんに。

山門を入ってすぐに林房雄揮毫の万葉歌碑があった。

わが衣 色にそめなむ うま酒三室の山は もみぢしにけり 柿本人麿 巻7ー1094

境内の楓も紅葉が始まっていた。山辺の道と云われるこのあたりは狭くて車が一台通るのがやっと。山門前の道標に「右はつせ いせ」「左三わ明神へすく」とあった。

季節を運ぶ

色鳥や視界の端を横切れり

2階の書斎にいたとき、視界の片隅をよぎるものがある。

行く先を確かめてから双眼鏡で確かめてみると、羽の部分にある特徴的な白三角形からジョウビタキの雄だと分かる。前の住まいからは既に先月目撃情報が寄せられているので驚くことではないが、やはり季節の鳥がこのようにして間近に見ることができるとうれしくなる。小さな鳥で色の美しいものを総称して「色鳥」というが、晩秋の季語になる。
そういえば大和川でもようやく緋鳥鴨の姿が増えてきた。冬鳥ウォッチングの季節到来だ。

甲賀路

猪垣の崩れしは田の放棄らし

澤口先生の個展の帰途は思い立って鈴鹿峠越えの道を選んだ。

R307で甲賀・水口経由信楽へ出てR422で伊賀へ廻る算段だ。
険峻で鳴らした天下の峠も今では道幅も広く、あっけなく「あいの土山」へ。道の駅で昼食をとろうにも市民マラソン大会のあおりで満車状態。仕方がないのでひたすら信楽をめざす。途中「紫香楽宮跡」という標識があったので車を停めてみたがそれらしきものがさっぱり見つからない。信楽焼店舗を兼ねるうどん屋でようやく「松茸うどん」にありつけた。久しぶりに松茸の歯ごたえを堪能して再びR307に戻る。
R422に入るとやがて伊賀への山道になるが谷戸という谷戸の周囲が低い猪垣に囲まれている。ここらあたりは昔から猪垣が多かったとみえて次のような句がある。

猪垣が見え四五戸見え奥近江 久米幸叢

廻る寿司

廻る寿司頬張りをりぬ文化の日

どこで食うか、さんざ話し合ったあげくが回転寿司。

11月3日は家人の誕生日で夕食は外でとなったが、これといった店を未だ見つけてないので結局全国ブランドのチェーン店ならということで「XX市場」に行ってみることにした。
店に入った途端ここは居酒屋かと思うような煙。最近やたら「炙り」と称してガスバーナーで表面を焼くのが流行っているがここのはもっとひどい。それだけでもう幻滅してしまった。

2回目の冬

秋深し盆地の暮らし慣れたるや

ここ数日寒い日が続いています。

今日は11月末の頃の陽気だそうです。鉢物に注意しないと枯らしてしまう恐れがあるので毎日天気予報とにらめっこ。この日曜日は下手すると5度を切るかもしれないので、明日あたりは部屋へ取り込もうと考えています。