天平のペーパーナイフと緩き冬
入館まで45分ほど行列。
平日というのに正倉院展は大変な人気だ。近鉄奈良駅を降りたときはみんなが奈良国立博物館に向かうのではないかと思われるほど、いかにもそれらしい雰囲気の人の群れ。
だが、瑠璃杯を見た途端息をのむような美しさに人波の疲れなんてたちまち忘れてしまうほど。ポスターに描かれた絵に描いたような杯とはまるで別物のような奥深い神秘的なブルー。当時の貴族たちはこれらを片手に遙かシルクロードからやってきたワインなぞをすすっていたのだろうか。時空を超えていろいろなことを想像させてくれる逸品であった。
ペーパーナイフというのは刀子(とうし)と云われる10センチほどの刀身とそれを装飾を極めた鞘。文房具なのだが腰にぶら下げる装飾品としての性格が強い。小さいとはいえ刀身は完璧な剣のかたちをしているうえ、1300年を経ても錆ひとつなく光り輝いている。