四面の薄赤

畔四面こぼれげんげん咲きにけり

畔だけが赤い。

どうやら蓮華らしい。
田は荒起こしされて下草が顔を見せているのだが、蓮華らしきものはない。
ということは、前年の種がこぼれて再び芽吹いたということか。
いずれにしろ、居並ぶ雀の鉄砲を囲むように薄赤い蓮華が取り巻いて、この時期の景色をなしている。

防空

二上山ふたがみの見えて葛城山かつらぎよなぐもり

黄砂だ、Jアラートだと朝からかまびすしい。

さいわい黄砂は思ったよりはたいしたことはなくて、この程度の埃なら春にはしょっちゅうあるというくらいで拍子抜けである。お隣などは盆地はこんなものとばかり洗濯物、蒲団なども外干しで問題なさそうである。
黄砂は明日には落ち着くということで、今回の大騒動も一段落だが、問題はJアラートの精度である。というより、我が国の防空システムの脆弱性であろう。本土直撃かと脅かして、結局はFEZ外だったとは。こんなていたらくで空を守れるのだろうか。
むしろ北朝鮮の方で何発撃っても間違っても日本本土には落とさない精度の高さこそ脅威である。この数年民の腹すら満たさずひたすら開発に血道を上げてきた言いしれぬ恐ろしさを感じる。
国の安全を米軍におんぶに抱っこで、すっかり平和ぼけしてしまった国のままでほんとうにいいのか。
二上山はおぼろげながら容はしっかり見えたが、その奥に見えるはずの葛城山は黄砂のカーテンで閉ざされていた。ということは視程5キロ以上、10キロ未満という一日だったろうか。

まき時

くるくると展がりそめし柿若葉

身の回りはすでに夏の季語だらけである。

たまたま今日は寒い雨で、おまけに黄砂まで覆ってくるということだが、連日の暑さで梅は1センチほどの実を結びはじめたし、柿は小さな若葉をひろげようと背伸びをしているみたいだ。
この柿の葉で三つくるめるくらいになると、隠元豆の蒔き時だと昔から言われている。そのでんで言うとまだちょっと早いと言えるのだが、これだけ季節が先へ先へ進むのなら少々フライングでも問題なかろう。
これと同じように、合歓木の花が盛りを過ぎたら豆を、すなわち大豆だが、まけとも言われている。
このように、自然のものに即して農事をさだめるのは先人からの知恵だが、現代にも十分通用する考え方であろう。
ホームセンターへ行けば夏の野菜の苗がこれみよがしに店先に並べられている。つい手が伸びそうだがさすがにそれは早計であろう。いまだ遅霜のおそれもあるわけで、自重自重。

コンパニオン植物

炭酸泉浴すがごとき挿穂かな

イタリアンパセリが美味いことを知った。

昨年プランターにトマトのコンパニオン植物として植えたのがよく成らなくて放置していたが、それが今年立派な株となって復活し新鮮な若葉を茂らせている。
ハーブの一種だからとスパゲッティに盛ってくれたが、これが意外に美味いのだ。
昨今は若い人を中心にパクチーなるものが人気だが、これは家人も嫌う匂いでまだ口にしたことがない。ところが、このパセリは名前の通り、イタリアン料理によく似合う風味なのである。バジルほどは癖が強くなく、かと言ってしっかりハーブとしてのテイストは失っていない。
種でも蒔こうかなと思案していたら挿し木でも増えることを知って、さっそくペットボトルの空き瓶に挿してみた。もう数日は経つのだがなかなか発根はしないようである。ただ、毎日水を交換しているのだがその都度ボトル内にはまるで炭酸水でもあるようにおびただしく水泡がついていて、挿し穂にもびっしりと泡が囲んでいるのである。
これをどう考えるかはわからない。単に水道水の何かが日光に反応しているにすぎないかもしれないし、もしかしたらパセリが光合成によって水道水と何らかの反応をおこしたのかもしれない。
どちらにしても一体いつになったら発根するのだろうか。

気取り

霾天の底に見上ぐる薄ら青

雨跡が乾いて黄色いものが残った。

黄砂のようである。
ときどき埃っぽい日があるが、雨に混じって落ちてくるようである。
ほんのわずかだからこそ気づかない黄砂がこの時期かなりあると思われる。今年はさいわい花粉アレルギーがあまり出ないで済んだが、やはり埃っぽい日は鼻をかむことが多くなる。花粉プラス黄砂の細かい粉塵を吸っているのであろう。俳句の世界では雪解け後のほこりっぽさを春埃などと気取っているが、昨今はその実汚染物質にまみれているのである。

権利

一票の責を果たして春の宵

選挙の日だというのに妙に静かだ。

さては開票は明日なのか。
投票は権利だが、ここ数十年迷走を続ける国には今こそ投票こそ責務ではないだろうか。
地方選挙といえど一票に責任をもって投じたいものである。

選挙戦最終日

連呼して花逝く雨を呼びにけり

冷たい風を伴う春時雨だった。

この雨はどうやら花にとどめの雨となったようである。
これよりは初夏の花、花水木、藤、桐など鮮やかな花が野山、里を彩るはずである。例年よりは早く初夏を迎えようかという陽気だったが、ここしばらくは平年並みとか。
今日はまた一枚羽織るような花冷えでもあり、猫どもも暖房でおとなしく寝ているようである。
明日は知事選、県議選投票日。昨日今日はひたすら連呼の候補者であったが、さて誰に投票しようか。