当たり前とは

着古しの雨に濡れたる案山子かな

このところ趣向こらして人間的な案山子が数体立っている。

稲刈りを目前に控え二週間ほど目を光らせているようで、その効果か、稔りは順調のようである。
すぐ隣は昨日稲刈りが終わったばかりで、稲架にたわわに成果が架かっている。
案山子田は春は一面は紫の蓮華に包まれ、秋はこうして案山子の風景。隣の稲架といい、今の時代に珍しくも光景が一カ所に凝縮しているのが貴重である。
一段高いところにある小学校校舎からは、彼岸花が姿を消した後も昔ながらの棚田の風景を眺めることができるが、子供たちには大きくなってもそれは最早当たり前ではなかったのだということを知っておいてほしいものである。

手刈りならでは

昨日までなかりし稲架の匂ひけり

一日にして風景が一変した。

機械の助けもあるのだろう、半日で稲刈り、稲架組み、稲架掛けが終わり、辺りにかぐわしい匂ひを放っている。
その周りのまだ稲刈りの済んでない田には、趣向を凝らした案山子が何体も出現していかにもこの季節の景。
機械化が行き渡る世の中で、手刈りならではの眺めが楽しめるのも嬉しい。

酒量

秋風や葉書の欠に丸を打つ

この時期、いろいろお誘いの案内が届く。

暑さも落ち着いた秋は同窓会、OB会などのシーズンかも知れない。
我ら世代とそれ以上の世代の連絡手段はいまだに郵便で、メールやSNSなど便利なツールもあるなか幹事の仕事もなかなか大変である。
なかには毎年会報を発行している会もあり、たとえ欠席でも近況報告を兼ねて拙稿を送らねばならない。会の当日はしばらくは欠席会員の近況などを肴に盛り上がることになる。
秋の集いは熱燗などいろいろな酒がうまい。秋の夜長を、気のおけない仲間と過ごせばあっという間に時間が過ぎてゆく。どなたも酒量は昔に比べればずいぶん減ったが、自分の適量は十分コントロールできる世代となっている。

お手上げ

冷ややかに虫喰の菜を引つこ抜く

風が冷たかった。

立ちっぱなしでいると水洟が出てきてしょうがない。昨日からTシャツの下に長袖を着込んでいるのだが、それでも風が身のうちを通り抜けるようで寒くてならない。
大根を蒔いても蒔いても芽が虫に食われる。小蕪も、菜花もみな同じ。
青虫はネットをかければ蝶を防げるので影響ないが、土に潜む虫にはお手上げである。
その大根サルハムシは当地の菜園をやるまで経験したことのない虫である。
間引き菜の王様である大根がこのありさまというのは悲しいものである。

帰ろうサイン

部屋一つ割り当てられて夜長かな

今月から町内放送の帰ろうサインが午後五時に繰り上げられた。

春から夏は午後六時で、まだまだ暮れるには空も明るくやれることも多い。だが今となっては日が沈むのも早くあっという間に時間が過ぎてゆく。
蚊も少なくなって外もいいが、どうしても秋は室内に居る時間が長くなる。
夕飯、風呂が終われば夜は長い。

違和感

またとなき笑顔のポーズ秋桜

草刈をしていてコスモスに刃が触れた。

気をつけていたのだが、あっという間のできごとでせっかくのコスモスに悪いことをした。
コスモスにもいろいろあるようで黄色いのは咲くのも早く花期も長いようである。
あちこちの園地では黄色のものは少なく、ピンク主体の昔からよく見るタイプが多い。
暑さから解放されて、何万本と植えられた公園には老若男女多くの人が押し寄せている。花に埋もれてスマホにポーズをとったり、納めたり。みんながみんなスマホかざしているのにはどこか違和感も。

急冷

気に入りのシャツほころびて秋めける

急に秋らしい日となった。

いつものシャツでは寒いくらい。しかし体はまだ夏仕様のようで、昼間なら一枚でも何とか過ごせるほどだが夜はさすがに薄掛けはミニマム。今朝などは開け放してあった窓さえ閉めて縮こまっていたのだが。
今夜あたりは長袖パジャマの出番かも知れない。