自然循環

口伝てに広がる恐怖穴惑

何気なく触れたビニールマルチにとぐろを巻いていたと。

たしかに私の区画でも今年だけでも二回も蝮の赤ん坊を目撃している。
この情報は昨日から今日にかけて全員に伝わったようで、お互い気をつけようということになった。
急に涼しくなったので暖かいところでおとなしくしていたと思われる。これから気温が下がってくると蝮の行動も緩慢になるだろうことは十分理解できる。
災害は忘れた頃にやって来るという。まむし禍もうっかりしているときに起きるかもしれず、みんなで情報共有することは大事である。田圃に囲まれた菜園は蛙も多く、蛇にとっては餌に困らない天国であろう。イタチもモグラも生息し自然循環が豊富なエリアである。それだけに思いもかけない危険が潜んでいることに留意したいものである。

長旅

長雨の涯を低きに秋燕

10羽以上いたろうか。

雨のやんだ田の上をしきりに群れ飛ぶ。蚊などの小さい虫がたくさん飛んでいるのかもしれない。
小集団にまとまっているのはそろそろ帰る準備か、はたまた旅の途中のものか。いずれにしても長旅に備えて体力増強に努めているに違いない。
おそらくもう明日は姿は見られないだろう。
来年春にまた会えるだろうか。

感覚的

水澄むやワイヤと板の橋揺れて

「水澄む」という季語は実に感覚的である。

秋は殊の外水が澄むから生まれたとされるが、本当だろうか。秋は空気が澄むことが多いからうまれた連想に過ぎないのではないか。この題が出されるたび、いつもこのことを感じる。
水が澄んでいるところは普通年がら年中澄んでいるものであり、そうでなければ雪解けや雨で流れ込む川や池、湖などは晴れ続きで濁ってないという意味しかもたないはずである。現に我が町を流れる大和川など、上流からプラスチックゴミなどが流れ込み、とても澄んでいるという気分には遠いものである。
生まれたばかりの水が滴る源流、伏流水が長い雌伏をへて地上に顔を出した湧水、水が生まれてまだ人の手も人工的なものにも毒されてない流れなど、これらはまがいもなく澄んだ水であり、しかも一年を通して変わらない澄みようである。
花鳥諷詠という虚子を中心とする季題の本意中心に詠む方法では、こういう感覚的な季題を詠むのは得意ではない。無理にこだわると、先に述べたようないつも澄んでいて美しい景色しか描けない限定した使い方に陥りやすくなる。そんな句はとてもつまらないものに映り、ちっとも上手いとは思えない。
だから、勇気を出して感覚的に詠めばいいと思うのである。

何度も何度も

間引菜をつつむがことく掌に

大根や人参など間引菜の採れるシーズン。

大根などはそれが楽しみで、筋撒きの密度も高く種を蒔いている。種を一袋買えば二、三百本ほどもできる計算になるので、どうせ余るならと言うこともあってばらまくようにして蒔くのである。最終的には二、三十センチ間隔にまで間引きをするわけでいやでも香ばしい間引菜が摘める。
間引いたばかりの野菜はとても柔らかく、乱雑に扱えば簡単に折れてしまったり、高い体温で握れば新鮮度も失せてしまう。パリパリの間引菜を持ち帰るためには大事にだいじに扱うことが大事。
とりあえず今日は人参の間引き。柔らかい葉っぱはかき揚げや天麩羅が香りも高くてほんとうに旨い。大根もそうだが、人参も大きくなるまでに何回も間引き菜が楽しめるのが秋の畑である。

そよぐ

銀テープたえず煌めく彼岸花

銀テープ。

稔り始めた証しであろう。
日に日にテープをめぐらした田が目立つようになった。おりしも畔には彼岸花も咲き出して、これからしばらくは豊かな色の季節を迎えようとしている。
銀テープは裏が紅でこれが風にいざなわれて煌めきの度合いを高めるようになっている。季語で言えば「鳥威」の一種でもあるが、今日はどうしても顔を出し始めた彼岸花が主役のように思えて添え役にまわってもらった。
この辺りは住宅地に近いせいか、音のする鳥威はないようである。
わずかな光があれば、昼も夜も銀テープはそよいでいるのである。

二期作

穭穂の揃うて伊賀の日本晴

伊賀盆地も34度。

大和盆地も変わりなく、日中は外へ出る気がしない。
ただ、野暮用もあって昼の伊賀上野へ。
ICを降りたら、目の前にはすでに20センチほど伸びた穭田が広がっていてびっくりさせられる。
前回来たときから一か月もたってないのに、稲刈りが終わりまったく別の景色が広がっている。
穭というのは晩秋の季語とされてきたが、刈り取りが八月に済んでしまうなど気候に備えて品種改良も進んできたのだろう。
このまま温暖化が薦めば本州でも二期作が可能になってしまうのではないかと、逆に危惧するのであるが。

一匹半

秋刀魚食ふ三匹パックを二に分けて

一匹半はさすがに多い。

しょっちゅう食えるものではなくなって久しいが、秋刀魚はやはり一匹がいい。
いくら小さなものとは言えど。
脂はと言うと、ちょっともの足らないが。