句座中断

雪起こし帰路気がかりの句会かな

雪起こしならむ見合はす顔と顔

御酒すすめ余技も披露し納句座

今日は宇陀市榛原で行われている定例句会に初めて参加した。

結社に属してない、あるいは現代俳句派の人も含めて多彩な顔ぶれだ。この日は欠席投句を含め二十五人分くらいの出句のなかから選句中、二度にわたって比較的強い雷がなるというハプニングがあってその都度手を止めては座が騒がしくなる。
この宇陀はと言うと、神武東征ルートにあって国ン中に進出する際の足がかりとなった山間地域であり、国ン中よりなお寒い土地柄である。案の定、句会が始まる頃には雨だったのがいつの間にか霙に変わってきていた。さらに、句会の後の納会がはねていざ帰らんとする時にはとうとう粒雪に変わっていて頬にあたると痛いほどだ。まさしく、今日の雷は季語に言う「雪起こし」そのものであったわけだ。

代々に

落葉焚ガイドもしたる社守

またまた八幡さんのお話。

散歩途中によく寄るが、人に出会うことは滅多にないのに、この日はたまたま落ち葉を掃いて、それを焼却炉で燃やしている人を見かけた。毎日ではないにしても時々来てはこうしているのだと言う。さらに、社が室町時代の建築で国の重文に指定されていること、数年前に檜皮屋根の葺き替えたときも国の補助で何とかやれたことなども問わず語りにいろいろ説明してくれる。
おまけに、大晦日には甘酒などもふるまうので除夜詣にぜひお出でくださいと仰る。もちろん元旦詣もあって、身近なところで昔からの習慣が根付いていることにあらためてその良さを感じる。

番人さんがこれら一連のすべてを手を休めることもなく、ごく当たり前のように淡々とこなしていく無駄のない動きは見事なものだった。

庭片付け

枯萩といへど枝の先まで生きてをり

枯萩は名ばかり枝の枯れやらず

「萩を刈る」は晩秋の季語。

ただ、同じ刈るものでも「萱」「蘆」というのは刈り取ったものを再利用するという目的があるが、萩の場合はあくまで翌年の芽出しを促進するためのものであることが特徴だ。
根元からすっぽり刈り取ってしまうのだが、もう既に来年の芽はしっかりついているし、刈り取った断面をみても青々としていて決して枯れてはいないことが分かる。

玄関のアプローチに植えた萩は今年で二年目だが、通行の邪魔になるくらいものすごい成長力なので今日天気のいい日を選んで移植することにした。跡にはヒメシャラを植えたが、他にもいろいろ庭かたづけがあってようやく一息つける頃には日が暮れ始めていた。

今年の句(後半)

サンタクロース今来たるよな飾りかな

ベランダにサンタクロースの飾りかな

クリスマスイブとかで、家の外にまでいろいろ飾り付けをする家が増えた。

今日見たのは、ベランダに縄梯子が架けてあって、そこにサンタ人形がよじ登っているという、家そのものがツリーという凝った意匠ものだった。いろいろ考えだすといろいろなアイデアが浮かぶんだろうな。

さて、今年後半の十句。

九月にステント手術を受けるという思わぬ仕儀となり、ちょいと冴えない期間でもあった。

結界の外は現世夏あざみ
仲秋や吾を貫くカテーテル
今日さらに遠くまで来し曼珠沙華
堂奥の像にとどける秋日かな◎
充血の目をむき鹿の角切らる
入舟の遅々と進まず秋の潮
アンテナのぷるんと震へ鵙の消ゆ
御旅所の雑仕ら囲む焚火かな◎
餅搗を了へし臼より湯気上る◎
仕留めしを口々に誉め薬喰◎
 ◎は俳句会入選句
 一部手直しをしています

句会もう一つ

数へ日や新たな句会誘はれり

今年も残るところ10日を切ったところで年末の句会のお誘い。
六句出句が条件とは大変だが、年末の句会顔見せでいきなり納会付きとは楽しそう。

さて、二年目の「今年の句」を今日明日と二回に分けて披露したいと思う。
まずは今年前半のなかから。

対岸のひとには負けじ寒稽古◎
本堂の土間に残りし寒さかな◎
一度だけ咆へて了んぬ春の雷◎
苗売の言ふままあれもこれも買ひ◎
野遊や薄紅引ける石仏
ジーパンに着替へ宮司の花衣◎
国ン中を鎮め大和の花筏
空瓶に一輪活けて椿守◎
保護したる子猫の顎の強さかな
きれぎれに瀬音混じりの河鹿かな◎
 ◎は俳句会入選句
 一部手を入れたものあり

年の暮

年の暮妻の手はずに抜かりなし

トゥードゥーは諳んじ妻の年の暮

はじめて俳句会の本部例会に出席しました。

参加者六十名超、句誌でみるそうそうたる顔ぶれの中で気後れだけはしないようにと乗り込んだわけですが。
兼題が「薬喰」、「年の暮」、席題が「冬休」、合計七句投句し五句選句。
結果は入選一句。ほっとしたところです。

掲句は投句したものとは違いますが、それなりに我が家の歳末を詠めたのではないかと思います。私は家人の指示に従って動くだけです。

薬袋の常より厚き年の暮

天然ものはどこが違うか

天然とふ鯛焼を待つ焼けるまで

焼きたてをおじゃみしてゐる鯛焼かな

箸墓古墳前。

国道百六十九号線沿いにその店はあった。
鯛焼には天然ものと養殖ものがあるという。その違いについて日本一たい焼にうんちくが書いてある。
夏までは斑鳩町にもあったのが、どういうわけか閉められてがっかりしていたが、たまたま車を走らせていて発見。仕組み上大量生産に向かないとかで車の中で待つこと数分。

焼き上がったのを車の中でそのままフウフウしながら頬張ったが、あんこが熱くて危うく口の中が火傷しそうだった。