蜜柑がうまい

土竜塚いまだあたらし冬日向

ここ数日でもぬきんでて温かい一日だった。

小春日のなかの小春日。
こんなときこそ朝に昼に忙しく、いろいろ用事はあるものだ。
あっという間に日が傾いて、帰ってきて食う蜜柑がうまい。何個でも食べられそうだ。
蜜柑といえば今頃の蜜柑が一番甘くおいしいと思う。
正月を過ぎれば果肉に締まりがなくなりそう多くは食えなくなる。初冬の蜜柑が一番うまい。

催促

間違ひファクス詐欺を疑ふ十二月

珍しくファックスが来た。

家人は詐欺と信じて無視しているが、見れば法人から法人への見積書で事務の手違いと分かる。
分かるが、かかわるのも面倒なのでそのままに放置しておいた。
ファックスが来ない、いや送ったの問答でトラブルになっているかもしれないが、必要な見積なら催促しているだろうから問題なかろうという判断である。
師走でそれぞれせわしいことである。

気まま

短日やおやつ食ぶれば根が生ひて

あと10日もすれば冬至。

ずいぶんと日が短くなってきて、何をするにもあっという間に日が暮れてしまうようになった。
だから二時頃までなら何かしようと言う気が残っているが、三時となるともういけない。とてもこれからは外へなど出る気にもなれず、家にこもってひたすら暮れるのを待つのみだ。
今日などは昼間は10月の陽気だというのでずいぶん暖かく過ごせたが、それでも二時半とか三時と聞けば何もやる気が起きなくなってしまうのだ。
これを齢のせいだとするのは自虐すぎて、そうではなくて気ままに過ごせる身分のありがたさと思うようにしている。

やれやれ

霜除や樹下の皐の凍てかねて

ついこの間までは蝶が飛んでいた。

なかには虫除けの網に囚われの身となったものもあったのだが、そんな間抜けももう見られない。
虫が消えても菜園では虫除けの網がそのまま防寒、霜除けとしてなるらしくだれも解くものはいない。むしろその上に不織布をかぶせて強化さえしている人も。
ひるがえって、そういう面倒なことは苦手なので防寒しなければならないものは手がけないことにしている。たとえば寒の菠薐草など。
今日も見廻りにいったらでかいキャベツと大根をいただいた。毎日のように大根を食べているのだが、老夫婦も最近はたくさん食べられなくなって嬉しいやら大変やら。しかも野菜高騰のときもあったが、いまは逆におどろくほど安くなっているとか。やれやれ。

在庫

金婚のおでんと決まる阿吽かな

「夕飯何がいい」と問われて「おでん」と応ふ。

こういうときたいていは好物のコロッケ、家人得意のハンバーグ、面倒くさそうだなという雰囲気の時はカレー。たまに茶粥ということもあるのだが、最近は秋刀魚のいい丸干しが手に入らないので機会が少なくなった。
今年すでに何度かおでんとなっているのだが、これは菜園をやるようになって大根をいただくことが多くその消化という意味合いも強い。今日は冷たい雨におそらく戸外は10度に達しないくらい寒く、家の中も暗いので温かいものがいいと思って所望した。
掲句のように何も言わずにすっと出てくるような夫婦では決してないが、年が明ければ正真正銘の金婚を迎えるということもあって理想を詠んだだけのことである。
ともあれ練り物の買い置きもあったようですんなり決まったということである。

久闊を叙する

特産の歳暮に寄するかの地かな

友人や知人からとどくお歳暮には土地の名産が多い。

H君からは長いも、N君からは辛子明太子、Sさんからは林檎(今年は遅れているという)などなど。
それらにはおのずと土地柄があらわれていて、いただくたびに彼の地をしのぶよすがとなる。
さらにまたそれらを生み出す山河の姿も浮かんでくるのである。
コロナ禍で会うこともかなわないが、御礼の電話で久闊を叙するのもまたよきかなである。

一夜のマジック

雑木山眠らんとして煌めきぬ

まわりの山という山が急に輝きを失い始めた。

急激な寒さの到来で錦のような山紅葉も、一夜で覚めた色に激変して驚かせる。
これより葉を落として冬の眠りにつくのだ。