まっしぐら

蝋涙の湯のごと落つる朝曇

蝋燭に火を点けてすぐ蝋がしたたる。

朝から気温が高く、蝋の溶けるスピードがあきらかに違う。一気に蝋溜まりにまで落ちてしまうのだ。
今日も暑くなりそうだと思いながら、朝のお勤めの手を合わす。

存在感

受け流す風の重たし夾竹桃

あの大木がゆさゆさと揺れている。

揺れれば白はその純白さをちらつかせ、赤は情熱の紅の盛りを誇るようにもみえて今が盛りの季節である。
黒南風と言っていい今日の風であるが、その暗い風のなかにあって存在感を際だたせてもいるようだ。

厄介になる

接客のマスク欠かせず汗まみれ

いっぺんに汗疹ができた。

比較的涼しい梅雨に体が馴染んでいたせいか、急に猛暑日がつづくとあちこちが痒くなった。
最初は虫かと思ったが、どうやら汗疹のようで体がすぐに悲鳴を上げだしたのだ。
風呂上がりには天花粉をしっかりはたいているが、朝にはもうべたついて効果が続かない。
こんなときに、防疫のためとはいえマスクして接客に当たらざるを得ない生業のひとたちはほんとうにごくろうさまである。
医療や介護、とくに在宅介護サービスなど必ずしも万全とも言えない環境で間近に人と接する業務は並々ならない苦労があろう。
できるだけそんなお世話になりたくないとと思いつつも、これだけは避けて通れない道。
健康を念じてこの夏を乗りきらねば。

苦行

ちかごろの蝉は大きな声で鳴く

歳のせいだろうか。

蝉の声が煩くてならない。
暑さもあるのだろうが、耳があの波長に合わなくなってきたのではないかと思えてくる。
夫婦の会話すら聞こえなくなるようなトーンにはほんとうにイライラさせられるのだ。
とは言え窓を閉めればエアコン必定となるし、しばらくは朝の苦行が続きそうである。

2リットル

極暑これ序の口と言ふ初伏かな

「初伏」とは夏至の後の3回目の庚の日と聞く。

今年は7月16日にあたる。
夏至の後の3、4回目と立秋の後の最初の庚の日がそれぞれ「初伏」、「中伏」、「末伏」で、併せて「三伏」と言い、この頃は暑さがもっとも厳しいことからホトトギス歳時記では極暑の副題となっている。
昨日、今日の奈良市は34度越超。
梅雨も明けぬ前からこの暑さである。家人に言われなくても2リットル入りペットボトル一本を軽く空けてしまうほど。ほとんどが汗に消えたようである。体のためにはもっと飲まなければならない。
この分では梅雨明け後どんなふうになるのか。空恐ろしいような気がする。

晴れる

白南風や干さるるものの命帯び

梅雨明けかと思われる心地いい風。

ひさかたに乾いた風が汗ばむ肌に心地いい。
だが、喜ぶにはまだ早いという。また明日は下り坂とか。
それでもこうした日が訪れるようになると、梅雨もそう長くはないと心も晴れるのである。

畏敬

雨乞の窟へ背負ふ薬師像

こんなに雨が多い年の兼題が「雨乞」。

どうにも皮肉な話だが、自分が出したこととて文句をいいようがない。
もはやなかなか見られない雨乞神事で、テレビで見たある村の年に一度の雨乞行事から着想を得て創ったものだ。
そのテレビでみたものは、村の各家から一人の男が出る決まりで、断崖絶壁にとりつき決落ちれば即死という死の行であった。
各家から出すわけだから、なかには相当年を召した方もいて、それは難行苦行。
こうまでもして百姓の村では水は命なのだ。
蛇口を捻ればばあーっと出る現代でも、昔を忘れず村人たちの自然に対する畏敬の念を思う。