厚切りトースト

トーストの焦げ目しつかり柚子のジャム
種残る柚子のジャムとはなりにけり

いろいろな大きさの柚子をもらう。

早速ジャムに煮てもらう。
ときどき種も混じるときがあるが、やや酸味のきいたジャムはあっさりしていてホカホカの厚切りトーストにぴったりだ。それもしっかり焦げ目のついたトーストがいい。

サイン

ぶらぶらと食べ頃サイン吊し柿

3週間以上は経過した。

そろそろ取り込んでいい頃だ。
百匁柿というだけあって皮をむいてもずしりと重量感のあったのが、水分がずいぶん抜けて今では体積でいうと四分の一くらいに縮み、今日の小春のわずかな風にも揺れるくらいだ。
まさに、天日干し完了のサインだろう。

一将校成りて

犬の尾の触れみ触れずみ枯尾花

絮もほとんど飛んでしまった。

万骨枯るといった風情だが、意外にしぶとくて簡単には姿を消さない。へたすると冬だって越してしまうほどだ。
ま、しかし、枯れたのなら潔く土になったほうがいいと思うがどうだろうか。

「降りみ降らずみ」という言葉はあるが、この用法は許されるかどうか。

ゆかしい

女子大はメタセコイアの枯れっぷり

正門を前景にメタセコイアの大木がそそり立つ。

この時期になると、黄葉して異彩を放つことになる。
奈良女子大のシンボルツリーともいえるこの木は、行くたびに仰がずにはいられないほどの存在感がある。
和名をアケボノ杉というらしいが、やはりメタセコイアの名が通っているし、異彩を放つ姿に対してはそのままで呼んだほうが相応しいように思える。
卒業生の方にとってどんな存在なのかは知るよしもないが、通りがかりのものには強く印象に残る何ものかがある。
来月になると葉をすっかり落とし、その均整の取れたシルエットがまたゆかしい。

走り去る

しぐるるや傘だれも持ち合はすなく
持ち合はする傘なく宇陀の初時雨

宇陀の時雨だった。

句座がはねて外へ出たらぱらぱらと来たのだった。先ほどまで窓から冬日がさしていて、意外に温かい日だなと思っていたので意外だった。山がちな地形を縫って、走り去ってはまた通り過ぐ。そんな繰り返しが今年も見られるのだろう。

濃霧の朝

冬霧の一番乗へ男の子
少年の冬霧漕いで下りけり
冬霧にペダルを漕ぐは少年らし

10日ほど前のことだが、前夜から翌朝にかけて霧が発生した。

11月は霧が発生しやすい時期だということだが、今まで見たなかでもかなり深い。
家の前は坂となっているところ、自転車の少年が猛スピードで下ってゆく。
車はみなヘッドライトをつけているくらいの濃霧なので、ハッとする光景だった。

ハンドクリーム

初霜に草履取らるるデッキかな

今日は今年初の霜を見た。

車の屋根は何日か前にとうに降りていたのだが、今朝は庭の芝生もうっすらと化粧されていた。気象台でも初霜観測ということだった。
デッキに指をおいてみても、くっつくとまではいかず体温ですぐ溶けてしまう程度だ。これが年が明けて寒に入る頃には吸い付くように離れないことがままあるのだが。
水はまだ切れるほどの冷たさはない。だが、老人性乾燥性なのか、手指が荒れてきたようだ。ことしもハンドクリームの季節となった。