豊の羽後

みちのくの林檎ひだりに黄金みぎ
みちのくの朱より紅き林檎かな

鳴子から峠を下って横手盆地に入った途端目を瞠った。

国道の右半分が黄金の波、左半分が林檎園である。
頃は9月の末だったか、刈り入れを待つばかりに首を垂れた稲穂が光り、誰も人の手の触れられてない林檎は黒を帯びた赤色をしている。国道は街中を抜けないから、そんな状態が延々と続く。
豊かな国だと思った。銘柄米「あきたこまち」の産地だから当たり前だといえば当たり前だが。黒光りしていた林檎の種類は何だったんだろうか。
視野いっぱいに黄色と赤の景色がひろがる、豊の羽後はいまでも鮮やかに思い出すことができる。

明日はわが身

事務職の土嚢詰めもし台風来

台風第二陣。

今度は風はそれほどでもないが、雨の被害が心配されるという。
21号の被害がまだいやされないうえ、町内はたっぷりと水を含んで地盤がゆるくなっているので、町は対策に余念がない。
明日から予想される雨に備えて、役場では真新しい作業服の事務職が土嚢をせっせと作っていた。
電車を止めた住宅地の崖崩れで地盤をえぐられた住宅八軒はつっかえ棒でかろうじて崩壊を免れていて、使用禁止の貼り紙。
このような災害被害が各地でくりかえされるのは、いままでになく多く、明日はわが身を肝に銘じなければ。

天気待ち

田一枚刈り残さるる長雨かな

長雨がようやく途切れて快晴。

盆地の稲刈りも終わったかなと見回してみると、まだところどころ残っている田がある。
10月も終わりというのにまだ終わらないというのは、ここんところの長雨でタイミングを失したのかもしれない。
週末は台風の影響も出そうなので、はらはらしながら行方を見守っておられるだろう。

運転再開

水引いて夕月尖る大和川

夜になってようやく青空が顔を出した。

台風過二日目の、束の間の晴れである。
冴え冴えとしたした三日月と宵の明星が相並んで、空は澄み切っている。
久しぶりの秋の空気となったようである。
明日は、全国的にも秋日和だという。
夕方、最寄り駅の運転再開されたというニュース。
わずかな晴れ間を利用してやりたいことはいっぱいである。

災害大国

振替のバスをたのみの台風禍

最寄り駅近くで、線路を覆う土砂崩れがあった。

近くを通りかかったら現場と思われる場所にブルーシートが敷かれていて、復旧の見込みが立たないのだという。
というのは、住宅地の擁壁ごとすべり落ちて線路にまで達したもので、住宅基礎が半分露出したままパイプの支えでかろうじて家が落ちずにすんでいる状態。
いつまた崩れるかもしれないというのでは、たんに線路の土砂を片付けたら運転再開できるというわけでもなさそうだ。

このような被害や同じ町内で大和川が氾濫するのを目の当たりにすると、日本は災害大国だということをあらためて認識するのである。

必須のアプリ

すさまじき雨に避難の是非もなく

何度も有線で避難情報が流される。

ところが、激しい風雨で窓をすべて塞いでいるので、何を言っているのか全く聞こえない。
むしろ放送よりも頼もしいのは防災アプリの警告であった。あの地震の警報と同じく、ピロンピロンと鳴って教えてくれるので、スマホのNHKのニュース防災アプリのインストールは必須であろう。
近くの鉄道には土砂が流れ込んで大きな被害を受け、いまだに復旧の目途はたっていない。
ごく身近なところで通勤通学に支障が出るほどの被害があったというのも初めての経験で、今後こういった災害がいつでも身近に起こりうることをあらためて認識することになった。

鍋シーズン

新米のポップ表示し地元米

スーパーに地元の今年米が並ぶ季節となった。

意外に、大和米、大和肉はうまいのだ。
「奈良にうまいものなし」とは文豪志賀直哉の言だが、柿寿司だけが奈良の味ではない。
もっと生産量をあげてマーケティングにも力を入れれば、全国ブランドにもなる可能性が大なのだが、そのあたりの商売気に欠けるところがあるようだ。
野菜はというと、大和野菜という県外にあまり出回らないものがあるが、一般野菜は全く駄目だ。まず第一に硬い。歯ごたえがありすぎて、野菜の旨味というものが沁みてこないのだ。これからは鍋のシーズンだし、もっとうまい野菜が豊富に出回ってくれると嬉しいのだが。