お似合い

薫風や民の祝意のあまねくに

朗報に全国がわいた。

眞子さまご婚約は、暗いニュースばかりがつづく昨今に久しぶりにかけめぐったおめでたい話題だ。
また、お相手の青年もいかにも爽やかで、だれにでも祝福されるカップルになりそうだ。
これからも順調に次第が整っていくことを願う。

熊野の初夏

黒潮の海士の通ひ路車輪梅
車輪梅一枚岩の御陵とや
車輪梅かつを熊野を通過中

車輪梅を季語とするかどうか。

どちらかというと西日本の太平洋側海岸地帯に見られ、ちょうど今頃香ばしい花をつけるので夏の花には間違いない。
熊野の、伊邪那美の御陵とつたわる花の窟に見られるように、黒褐色の岩石が海岸線に沿って続くのが紀伊半島東部の特徴であるが、それらのあるところはまず間違いなく車輪梅が茂っている。
熊野のリアス海岸地帯にはとくによく似合う。

先日、同窓会の昼食をとったホテルの植え込みが満開の車輪梅だった。それと思われる一枝をテーブルに挿してあるのを見て、たちまち脳裏に熊野の海岸の初夏の景色が浮かんできた。

勝ったか負けたか

草野球チームいこふる山法師

ああ、もうそんな季節になったんだと思った。

目にも鮮やかな白い山法師が咲いている。木の下では試合を終えた草野球チームが木陰をもとめて談笑している。
勝ったか負けたか、今終わったばかりの試合の結果など全く忘れたかのように屈託ない笑い声が広がる。
紺色のユニフォームはまだ新しそうで、山法師の白と好コントラストをなしていた。

ハイキング日和

律法相つなぐ並木の緑立つ

久しぶりに西の京を歩いた。

気温はずいぶん上がったようだが、風があったせいか汗もすぐに乾いて実に心地いい日である。
午前中は平城京の予定だったが、都合がつかず昼食から合流した。
高校同窓会の平城京・西の京ツアーで、三重や関西から古稀二十数名のハイキングである。

薬師寺(律宗)では日曜日にもかかわらず、修学旅行なのか遠足なのかわからぬが、大勢の高校生の列で薬師さん、日光月光さんをゆっくり見ることはできなかった。ところが、どうやら東院堂は玄人好みというか穴場のようで、皆さん素通りである。おかげで堂内でゆっくり聖観音さんにご対面することができた。
緑滴る唐招提寺(法相宗)も比較的ゆっくり巡ることができた。見るもの、建物も仏さんも国宝揃い。心ゆくまで堪能させてもらった。とくに、この時期どうかなと半ばあきらめていた鑑真さんの故郷の花「瓊花(けいか)」が、一枝だけに咲き残ってるのを見たときは思わず声に出るほど嬉しく、みなさんに紹介させてもらった。
最後に、喫茶店でコーヒーでも飲みたいという声があがったが、この辺りではそんな店などありようはなく、大阪組と三重組はここでお開きとなった。

不在地主

鵯テナー椋はバリトンゆすらうめ
山桜桃不在地主のご無沙汰に

隣の空き地にしきりに鳥たちがやってくる。

どうやら食べ頃と見える山桜桃がお目当てのようで、鵯がきたり椋鳥もきたり、お互いに牽制しあいながら実を啄んでゆく。小さな雀も隙を狙っては実をかすめていく。イソヒヨドリもくるが、単独でいるせいか鵯の群れによく追われているようで、畑から少し離れたところであの美しい歌声を聞かせていてくれる。
主はたまに来ては、雑草を刈ったり、サツモイモを植えたりしているが今年はまだ顔を見ていない。いつもより早い実の生りようだし、この分では山桜桃はほとんど鳥たちのものとなるだろう。

溶けるもの

大路往き氷菓の棒の捨てどころ
粉もん屋居並ぶなかの氷菓売
粉もんの軒を借り受け氷菓売

食べ歩きならぬ舐め歩き。

子供もいい大人も。
行楽地では、イカ焼き、タコ焼き、大判焼きなど焼き物屋にとって夏は敵のようなものだろう。
ただ、食べたあとのスティックの始末、どうしようか。

個人的なことながら、アイスで一番好きなのが、井村屋定番・小豆アイス。夏は冷凍庫の買い置きが欠かせない。

欅の陰

剪定瘤巨き並木の新樹光

冬の間可哀想なくらい刈り込まれた欅並木に緑が戻ってきた。

欅の若葉の下はブナに似て明るいが、背がすっと伸びた高い木であることも手伝ってさらに開放的な気分になる。
日陰も作ってくれるし、真夏の並木道にはほっとするものがある。秋には秋で、素晴らしい黄葉。そして厚い落ち葉道。冬には、影が舗道に長く伸びて、街路のアクセントにもなる。
初夏の木々の初々しい葉の総称を「若葉」とすれば、木々の緑は「新緑」、みずみずしい緑に覆われた木々は「新樹」。使い分けはけっこう難しい.