霊園で

逆縁の墓を洗うて父老いぬ

墓参してきた。

霊園なので多くの人が家族連れで来ている。
他の墓碑銘を見るともなく見ていると様々な家族の歴史が見えたりするが、なかには早世した子の名を刻んだものもあった。子の名を刻んだだけの墓というのは寂しすぎると思った。

トロットで駆ける

跳馬と見紛ふ曲がり胡瓜かな

今日は旧盆の初日。

霊迎えの夕を迎えるにあたり菜園の胡瓜で馬を作ってみた。
スーパーで売ってるような真っ直ぐな胡瓜というのでなくて、くるっとした曲がりが入っているが、それがかえって動きがある馬のようにも見えて、先端は尾を立てたようにも見える。

瓜馬の足というのは四本の足のバランスをとるのがなかなか難しく、一本は宙に浮いたりするものだが、それがまたトロットの馬のようにも見えないでもない。
ご精霊が一足でも早くお着きになるように。

蘇る

新涼や電気剃刀滑らかに

今朝は涼しかった。

朝の最低気温は22度だという。
エアコンを入れない夜は久しぶりであった。
不快な汗もかかなかったので、電気剃刀が皮膚のうえを滑らかに動く。

通勤の朝、洗顔をすませても汗がにじんだ顔に電気剃刀をはわすこと自体が不快で、夏の間は昔ながらの剃刀を当てた記憶が蘇ってきた。

首まで浸かる

浴槽に浸るも久し夜の秋

風呂上がりが快適な夜だ。

ここ2,3日、ようやく夜の気温が落ち着いてきている。
いわゆる熱帯夜が続いている頃には体も火照っているせいか、風呂上がりの爽快感からは遠くエアコンの助けを借りてやっと一息つけるという有様だった。
だからいつもはカラスの行水程度だったのが、今日は首まで湯船に浸かってみても苦しくはない。

熱帯夜から解放されると思うだけで充分涼しいことは体が一番知っているようだ。

風化

語り部を継いで二代目原爆忌

総理と原爆被害者の会との会談の何と虚しいことか。

悲痛な希求に対する答えが国会答弁のそれと全く同じとは。
悲惨な体験から叫びに近いリアルな言葉に対して、空虚にしか聞こえない為政者の言葉、態度のギャップを見て、これ以上この国を冒険主義的な人々によって先導されないことを願うばかりである。

アメリカとかつて戦ったことさえ知らない若者がいることに唖然とさせられたが、唯一の被爆国であることもまた風化して行くのであろうか。

瓜を食む

捨てるには惜しき香りの瓜のわた

立秋が過ぎてもなかなか秋の句を詠む気にならない。

夏の題なら材料にまだまだ事欠かないほど、秋にはほど遠く暑い日が続いている。
まことに残暑ますます厳しい折りである。