観測用標準木

寒明や上枝ゆるまぬ標準木

かんあけやほつえゆるまぬひょうじゅんぼく

奈良地方気象台というのは聖武天皇さんの御陵の隣にある。

一条通から緩い坂を登っていった小高い丘の上にあるので見晴らしもよく、盆地のどの山までが確認できるかでその日の見通し度合いを測っていたりもするらしい。
最初、東京の桜の標準木というのは靖国神社にあるのは知っていたので、ここ奈良でも気象台と言うからにはどこかに観測用の標準木があるにちがいないと楽しみにしていたら、なんと門から建物へ向かう急坂のサイドに植えてある樹木がすべて標準木、副標準木だという。しかも標準木の種類というのは桜(染井吉野)だけかと思っていたら,他にもイロハモミジ、ヤマツツジなどなどいろいろあって新鮮な発見だった。

昨日の掲句のコメントに書いた百葉箱の他にも、いろいろ認識をあらたにする話がいっぱい聞けて興味がつきない見学であった。果たしてこのようなハイテク機器を駆使するようなところで句材などがあるのだろうかと不安に思っていたが、先輩諸兄姉はさすがに上手に拾い集めておられて己の未熟さをまたまた自覚するのであった。

アフターミィーティング

立春の風向計の目まぐりし
寒明や光乱るる風向計

第一火曜日はまほろば句会の日。

今回は奈良地方気象台への吟行だった。
この2月というのは、春とはいえ春を実感するようなものが少ない上、季語も少なくてそのこと自体が季材に乏しいことを示している。まして今日は昼頃に冷たい雨または雪だという予報だったので、果たして短い時間内に規定の作句ができるかどうか不安でしかないスタートだった。
どうにかこうにか義務は果たしたものの、やはり出来はもうひとつ。
考えてみればこういう日は当然ある、というよりほとんどがそうなわけで、さっさと頭を切り換えて句会後の茶話会を楽しむことにした。

茶話会が終わったら夕方5時。外はまだ十分明るい。日脚は相当伸びているのだとあらためて思うのだった。

稽古

保育所に響く鼓笛や春を待つ

卒園式の練習だろうか。

あるいは最後の発表会に供えての練習かもしれない。通りかかると鼓笛の稽古が外まで聞こえてくる。
今は受験の月だが、そのうち卒業、卒園シーズンへと時は確実に歩をすすめてゆく。

梅ほころぶ

双握りずつ振りかける寒肥かな
円を描くやうに施す寒の肥

陽気に誘われて庭仕事。

以前に買っておいた油粕の粉末があったので、寒の戻りがくるまえに寒肥として樹木に与えることとした。一通り終わって気づいたのが、白梅のほころび。今日あまりに暖かかったせいだろうが、今週また冷え込むという話だからこのまま一気に開花するのではなく、また引っ込んではほころぶ、そんな繰り返しをしながら満開へと向かうのだろう。

寒い当地にも季節はまぎれなく巡ってくるのだ。

髪切りに

スチームに骨もほとびる床屋かな

髪切りに。

理容店というのは常時タオルを蒸しているせいか店内には蒸気があふれ、暖房ともあいまって油断するとすぐに居眠りしてしまう場所だ。気がついたら起こされていたりとか。
すっかりリラックスして表に出れば、随分温かい日とはいえちょっと首筋にひんやりしたものが。ただでさえ薄いのを短くしたものだから、髪のなかを風が通り抜けてゆく感覚は一瞬だが心地よいものだった。

汗ばむ

手袋を脱いで大手の日和かな

今日も暖かい日だった。

ここのところ散歩には手袋が欠かせなかったが、今日くらい暖かいと手袋はおろか、ダウンの防寒ウェアすら不要だった。おかげでいつもより軽装で足取りも軽く。10分も歩くと汗ばんできた。

温室状態

窓開けて車走らせ春隣

天気がいいと車の中がまるで温室状態。

昨日などは少し窓を開けなければとても暑くてたまらないほどだった。こんな経験は3月になるとしょっちゅうなんだけど、今年は早くもといったところだろうか。

今日は一転して雨。だが、土が黒くしっとりしてきて、まるで「穀雨」ではないかと思えるほどだ。