ドライフラワーか

触れてみて音聞ひてみて麦わら草

写真を撮るのを忘れた。

「麦わら草」というのは歳時記には記載されてないので、季語として成立するかどうかは問題あるのだが、現に麦わらのようなドライな感触の花に手で触り「かさかさ」という乾いた音を実際に聞いてみたので、あえて詠んでみた。

指を染める

木苺の黒かと見えて紫紺なる

指染まるままに木苺頬張りぬ

ガラパゴス果樹園では垣根に沿って木苺が熟し始めていた。

木苺

もしかしてこれはラズベリーもしくはブラックベリーなのかもしれない。いずれにしても木苺の仲間である。
熟れた黒い実を失敬して指にとってみると、たちまち紫色の果汁が出てきて指を染めた。甘酸っぱい味がした。

ガラパゴス農園

吾が農園自然農にて梅雨晴れぬ

自らを「ガラパゴス果樹園」と名付ける農園があった。

垣根に木苺や葡萄を巡らし、李やリンゴのほかさまざまな果樹を育てているようだ。
どうやら自然農法を取り入れているようで、雑草は伸びるに任せ。明らかに一般的な農園と違う雰囲気で、ガラパゴスとはまさに自らを諧謔的に、しかしはっきりと独自の信念を宣言するために名付けたものに違いない。

衛士不在

梔子の花垣もはや錆び初めし

梔子の花垣沿ふて守部小屋

梔子の花垣に会ひ蜂に遭ふ

神功皇后陵の守部小屋には衛士は誰もいなかった。

梔子の垣根

あったのは梔子の垣根で、香りを嗅ごうと顔を寄せたら垣根の中から驚いた蜂が飛び出してきたので、こちらも慌ててしまった。

かわらない味

背の届く枝の楊梅賞味せり

手の届くかぎりやまもも恣

枝たはめ朱き楊梅選びをり

枝たはめ啄みをりぬ楊の梅

吟行メンバー一同、実際に手にとって食べてみた。

大ヤマモモの木の下で

あまりにもたくさん成りすぎたので実一つ一つは小さいが、それでも味はヤマモモ。少年時代に食べた味を思い出していた。

李も桃も?

果実酒にせむと楊梅拾ふなり

日葉酢媛命陵の前でおおきな楊梅(やまもも)の木に出会った。

日葉酢媛命陵前でヤマモモを拾う親子

木の根元を中心に半径7,8メートルくらいの範囲によく熟した実がいっぱい落ちている。見上げると木にもまだまだ実がいっぱいついていて、鳥たちが食べに来ても容易には食べきれないくらいある。

これを果実酒、いわゆるヤマモモ酒にするんだと言って、市内からやってきた親子がいた。
僕はというと、道に落ちてるやつを数個拾って濠に投げ込んでみたら、亀や鯉たちがやってきてたちまちのうちに飲み込んでしまった。