柳生の名所

花しゃうぶさそふ柳生の写真展

商店街アーケードの柳生写真展を見ていた。

これは奈良市広報コーナーで、訪れる人に向かってときどきの耳より情報を発信しているようだ。
柳生といえば誰でも剣豪の里のイメージを思い浮かべるだろうが、実は今頃が満開の「柳生花しょうぶ園」があることでも知られている。昭和60年に開園されたというから30年近い歴史があり、今では460種約80万株あるそうで規模としても有数だ。

小学生の遠足定番「あやめ池遊園地」が10年ほど前に閉鎖されたこともあって、この辺りでは数少ないあやめの名所なんだろうな。

外国人ツーリスト

サンダルがふみいる老舗土産店

この時期欧米人観光客のほとんどがサンダル履きだ。

朝開店したばかりの土産店、しかもいかにも老舗然とした店で私なら少々構えて入るところだが、ノースリーブ、ショートパンツ、サンダル履きのカップルは何事もないように堂々と入ってゆく。
店の方でも慣れたもので何事も無いように受け入れているようだ。実際、これで店の品位が傷つくわけではないだろうし、何より、買いそうな客かそうでないかの見極めは商売柄お手のものであるはずで、そのへんの呼吸は十分心得ているようにもみえるのだが。

火もまた涼し

薄衣の自転車こぎゆく寺の町

奈良町の坂道をごく涼しげに自転車を漕いで行くひとがいる。

薄物の法衣を来た壮年の僧侶で、昼の法事にでも呼ばれているのだろうか。
炎天下をものともせず颯爽とさりゆく姿は、さすがに修行した人にちがいなく、火もまた涼しの境地なんだろうか。

土間を吹き抜ける風

床几台土間に列ねて夏座敷

庫裡の間に床几台おき夏座敷

小子坊とは僧房の一つで、大坊が僧侶が居住するのにたいし小子坊はその従者が居住していた。大寺院にみられる僧房形式だという。

元興寺・小子坊の土間

元興寺・小子坊の庫裡の土間には、夏座布団をのせた床几台が置かれ小休止できるようになっている。土間の南北が開け放たれているので心地よい風が吹きぬけるうえ、ここに腰掛けて庭の方を眺めると新緑の光が目にまぶしく、まるで夏座敷といった風情をかもしだす。

秋には数珠の実が

菩提樹の咲き初めしとて香りなく

元興寺入り口脇に菩提樹の花が咲き始めていた。

東門入り口脇の菩提樹の花

ただ咲きはじめたばかりとみえ、独特の甘い香りがしなかったのが残念だ。
菩提樹は雌雄同株で、葉の表面に突起様の赤い花がさくのが雄で、雌は細い葉の陰からぶら下がるようにして黄色い花をつける。アップした写真を撮ってなかったので分かりにくいかもしれないが。

大きな櫨の木の下で

元興寺・極楽院の受付

緑陰を独り占めする寺務所かな

山門にかかる緑陰大いなる

大緑陰南京櫨のみわざなる

元興寺・極楽院の受付寺務所は大樹の葉陰でいかにも涼やかである。

元興寺・極楽院の受付

この木は南京櫨と言うそうである。
調べると秋には見事な紅葉をみせ、そして白い実からはロウが採れる。秋にもう一回訪れてみたいと思う。

甘い香り

大寺は花木大角豆の香の満てり

木大角豆の花の南国かもしだし

禅堂の裏手にまわるとたちまち甘い香りに包まれる。

元興寺の木大角豆
木大角豆の花

木大角豆(きささげ)の花だ。
秋になると、ささげ豆のように2,30センチほどの長さのさやができその実を漢方剤として利用される木だ。ひとつひとつの花を見るといくつもの蘭の花がまとまって咲いているように見え、いかにも南方から来た木だということが分かる。

高いものでは10メートルくらいになるというから、いつか極楽院禅堂の屋根も超える高さまで育つかもしれない。

木大角豆は実をもって秋の季語だが、花の時期ということで夏のものとさせてもらった。