薫風や羽影の主の誰ならん
窓を開けるのが心地いい季節だ。
風の取り込み口は低く、逃げ口はより広く高くするのが最も風が吹き抜けるコツだということだ。今日はそうするまでもなくわずか開けるだけで十分快適な外気にふれることができる。13時40分、机の上の温湿度計は気温27度、湿度27%を指している。こんな日は戸外で動けば暑いと感じるだろうが、室内で静かにしていればこのうえもなく気持ちがいい。
何をするともなく庭を眺めていると、何の鳥だろうか、鳥影がよぎるのが見えた。

めざせ5000句。1年365句として15年。。。
薫風や羽影の主の誰ならん
窓を開けるのが心地いい季節だ。
風の取り込み口は低く、逃げ口はより広く高くするのが最も風が吹き抜けるコツだということだ。今日はそうするまでもなくわずか開けるだけで十分快適な外気にふれることができる。13時40分、机の上の温湿度計は気温27度、湿度27%を指している。こんな日は戸外で動けば暑いと感じるだろうが、室内で静かにしていればこのうえもなく気持ちがいい。
何をするともなく庭を眺めていると、何の鳥だろうか、鳥影がよぎるのが見えた。
豆蔦を幹にからませ椎若葉
青々とした豆蔦が点々と椎の巨木を這い上がっている。
その先の椎の枝という枝には若葉が萌えている。森にあっては、寄生する豆蔦にとっては椎は頼もしい存在なのであろう。
おのが空占めてたくまし花樗
あふち(楝、樗)とは栴檀の古名だという。
成長力もあるらしく、狭い場所でも他を押しのけて自分の空を確保できるくらいたくましい。
5月12日、万葉植物園の楝はようやく芽立ちしたばかりで、みっちりと咲く花は葉がもっと茂ってからのことなので想像するのみであるが、楓と競ってその頭上に枝先を伸ばしているさまを見ているとこの木は賢い木なんだろうなあと思うのだった。
飯を盛ることなく椎の落葉かな
仮宿に盛飯なかりし椎若葉
万葉植物園ではところどころ草木が詠み込まれた歌碑が建っている。
大きな椎の下には有間皇子の歌碑があった。
家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る(有間皇子 万葉集 巻2-142)
高校の教科書にあった懐かしい歌である。謀反が発覚し熊野に行幸している斉明天皇のもとに送られる途中詠んだ歌だと、後になって知って深い感慨を覚えたものである。
この時期、椎や樫などが若葉を茂らせるようになると古い葉がしきりに落ちる。「椎若葉」も「椎落葉」もともに夏の季語であるが、かたや新しい命を、いっぽうは去りゆく命を詠む。歌碑の周囲一面の椎の落ち葉は、若い命を散らせた皇子と重なって見えてくるのだった。
若楓枝に吊りたるお品書

万葉集植物園まえに春日荷茶屋(かすがにないぢゃや)があり、今の時期若葉の下で休憩するにはもってこいの場所にある。
参道を行く人の目にはいやでも止まるお品書。それが新緑の楓の太枝に吊されて枝葉の影までもが緑色に映えているのが面白い。