赤い根

菠薐草土に食ひ込む伐鋏

冬だとばかり思っていたら春の季語だった。

春菊も同じく春。
なるほど春菊は名前からみても春だというのだろうが、実際には鍋ものには欠かせないものなので旬はやはり冬ではないだろうか。作付けも九月ごろ種を蒔けば今ごろから収穫が始まる。
今日は間引きをかねて菠薐草と春菊を摘んできた。さっそくちゃんちゃん焼きとなって春菊を使ったら、鮭の生臭さが消えて実に香り高いうまいものに変身した。市販のものよりも春菊独特の香りが強いように思える。肥料を施さず草の力、微生物の力で育てるので、生育はゆっくりだが味が濃い。
今年の菠薐草は硬い土に太い根を潜らせて出来もまずまずのようである。昨年は小さいままで成長がストップしてしまったので、土の力がいくぶん改善の方向へ向かっているということだろうか。菠薐草は根が命なので、その命をいただくべく鋏を土深く差し入れて収穫した。寒さがまだ本格化してないので甘さがのってないかもしれないが、さてどうだろうか。

モンベル恐るべし

重ね着の電池をまとふ中着かな

外で仕事する人たちに人気が根強いとか。

とくにガッテン系の人には必需品であるとも。
首、肩、腰のあたりをバッテリーの熱で温める電熱ベスト、ヒーターベストのことである。
アウターの下に着ればそんなに厚着しなくても動きやすくて快適に過ごせるアイテムだ。
夏は夏で、ベストと体との間をファンが起こした風がめぐり苛酷な夏の作業を緩和することができる。最近は菜園ファンの間でもこれが人気で、風で膨らむので一見暑そうに見えるが意外に涼しいのだという。これも動力源はリチウムバッテリーである。
電池仕掛けだから時間はもって4時間くらいだろうか。真冬ならば予備のバッテリーも持っていかねばならないだろう。
自然とともに暮らしているので暑いときは避け、寒いときは休む私には不要だが、どうしてもという場合は薄いものを重ね着することで耐えられるのも優秀な新素材が増えてきた恩恵であろう。
そういう観点からするとモンベル製品はやはり最強であろうか。デザイン、カラーはもう少し何とかならぬかとは思うが。

もったいない

そのひとつ鳥の食み痕柿花火

見事な枝振りに柿が満載である。

陽のよくあたる斜面には見上げるような大きな柿の木があった。
比較的暖かい十月だったせいか樹上での熟し具合も穏やかなようで、道には一つとて落ちたものがない。鳥もまだつつく様子もなく一つ一つの肌も艶々している。こんな見事な柿もだれも採るひとがいなければもったいないような気さえする。
しばらく過ぎて振り返ると、夕方に近い日に照らされてそこだけ浮き上がるようにも見えた。

毒の実

ビニールハウス朽ちなんとして烏瓜

耕作放棄地やら朽ちたビニールハウスやら。

周辺を歩けばそんな光景がすぐに見つかる。
朽ちたハウスには葛がはいまわり、今はそれも枯れようとしてあの真っ赤な烏瓜の実が目を射る。
写メに撮ろうにもあまりの荒廃に手が止まってしまう。
代わりに、陽のよく当たる竹林に珍しい葡萄状の青い実を見つけたのでアップしてみよう。

青つづら藤

この実を食べると最悪死に至る猛毒をもっているそうだ。粉を吹いていかにも甘そうだが、鳥も口をつけようとしないのかな。

椿井城

三成にあまる左近の山粧ふ

生涯がはっきりしない武将である。

主を求めていろいろな武将に仕えたが、関ヶ原を最後に消息が絶えた。鉄砲傷で死んだという話しもあれば、生き延びて静岡あるいは京都で隠れ住んだという話もある。
数々の武功に三成がおのれの知行の三分の一以上を与えて迎えたというから、戦国武将の間に名がとどろいていたのであろう。
「三成に過ぎたるものの二つあり。島の左近と佐和山の城」。
家康暗殺をすすめたが三成がこれを拒否し、関ヶ原緒戦では東方に手痛い打撃を与えたという逸話が残っており、歴史ファンにも人気がありそうだ。
筒井順慶に仕えた頃の拠点だと思われるが、矢田丘陵の南端に椿井城があった。西端の平群谷には平群川(正式には竜田川と呼ばれる)が流れ大和川に合流し、東側は大和盆地ににらみをきかす格好の位置にある。弾正の信貴山上を牽制する意味でも戦略的な価値が高かったであろう。
在五の業平の竜田越えルートともなっている法隆寺につづく丘陵南端は今雑木紅葉におおわれて見事に彩られている。

抵抗力

あたたかき冬に限りのけふの雨

夕方雨が止む頃になって急に空気が変わったように寒気がさした。

予報通りに寒冷前線の雨が去って、冷えた大気が流れ込んできたのであろう。
十一月に入っても二十度を超える日が続いて、冬という実感はなかったのでこれでようやく冬らしくなってきた。
こんなときに油断すると風邪をひくのだろう。さいわいうたた寝していてぞくっとするので目が覚めたのはさいわいだった。
こう考えると健康なうちは危険を前にすると、体が自然に反応して防御体制を整えてくれるのだと分かる。これが本当に体の抵抗力が弱っていたら、季節の変わり目などにもすぐに体に異変が起きるところである。
それにしてもアレルギーらしい水洟がとまらず鼻が痛くなってきた。

粘膜

往来に誰はばからん大くさめ

この時期のアレルギーは何だろうか。

おもわず出てしまったくしゃみ。
たまたま周りにはだれもいず、作法も何もあったものじゃない。おもいきりのハックションもすぐに吸い込まれて誰のおとがめもなし。
しかし、家に戻ったら今度は水洟。そう言えば日に何遍も鼻をかむので、どうやらこれは飼い猫アレルギーかもしれないと思う。
玄関の柊がそこはかとなく香りだしてきて、いよいよ鼻の粘膜にはとっては刺激が強くなってきて忙しくなったようである。