感性

さきがけて松の緑の伸び初める

この時期は松の芽がいっぱいついている。

なかには、その内の一つが伸び始めているのもあるようだ。まだ2,3センチほどだが、これが10センチくらいに伸びるとやがて雌花をつけ、秋には松毬となる。
調べてみると、松にちなむ季題、季語は多く、「松の花」、「若緑」(傍題に初緑、松の緑、緑立つ、若松、松の蘂、松の芯、緑摘む)は春、夏に「松落葉」、秋には「新松子(しんちじり。傍題に青松かさ)」「松手入」、冬になると「門松立つ」、新年の「門松(傍題に松飾、竹飾)」「松の内(傍題に注連の内)」「松納(傍題に松取る、門松取る)」「松過」など。

新緑に対して若緑を松の代名詞とする日本人の感性。この繊細さはどうだ。

恋の季節

囀や烏は恋の調子にて

森を歩けば鳥の声が賑やかだ。

中には、思いがけない聲も混じっているから驚く。烏の求愛だ。普段のだみ声とは似ても似つかぬ、何とも甘えた声はどうだ。
歩きながら、うまくやれよとエールを送っておいた。

沈静化を待って

春陰や改修終えし大天守

かつての輝きを取り戻したという。

姫路城。「白漆喰総塗籠造(しろしっくいそうぬりごめづくり)」というそうだ。瓦留めにとどまらず、窓の格子から庇の裏まで、すべて漆喰で塗り固めていて「白鷺城」の面目躍如というところ。
だが、この白さも数年限りだと言うから驚く。漆喰は黴に弱く防黴剤を塗ってあるとはいえその効果は長続きしないかららしい。そうと聞くと、この真っ白な姿を目に焼き付けるべく早めに行かなくてはならない。
とはいえ当面はブームで混むだろうから、それが落ち着く頃合いをひそかに探ることにしよう。

強風に耐えて

大池に映ゆる残花の孤影かな

今日は北西寄りの風が強かった。

やや季節が遅いが「貝寄風」と言っていいくらい。もう少し早い時期だと「強東風」「荒東風」という季語もあるが、それとはやはり違う風だ。
大きな木が揺らされて、開き始めたばかりの若葉、若芽が今にもちぎれそうである。
そんな強風でも、しなやかに受けて頑張る桜の木があった。白い花びらだったので大島桜だろうか。一部の枝は花びらが落ちて蕊となっているのもあったが、その枝だけが赤みを帯びているのでよく目立つ。全体には枝振りがみごとで、強風でも花びらは簡単には散らされそうもない。あと2,3日くらいは楽しませてくれそうな気がする。

馬見丘陵公園のチューリップはすっかり開いて、客足もまばらになった。
次は新緑のまぶしさに目が移ることだろう。

夢の中でも

晩飯を記憶に探る朝寝かな

認知症というのは近々のものから忘れてゆくのだと言う。

因みに、朝食った物や昨夜食った物をすらすらと言えるかどうか。これが怪しいとちょっと心配した方がいいらしい。
掃除機の音に寝覚めながら、昨夜食ったのは何だったとか反芻してみて「ああ、まだ大丈夫」と安心してまたうとうとと。朝寝はつくづくいいものである。

飽きもせず降る

引き籠もる術も覚えて菜種梅雨

それにしてもこの春はよく雨が降る。

雨が上がりそうなので外出の用意をしていたらまた降ってきたりして、なかなか遠出をする気持ちにはなれない。逆に、部屋の中でうまくやり過ごす方法なども身について、もうしばらくは雨が続いても保つような気がする。

紫野ゆき

町内会勤労奉仕花菫

今日は自治会の月一回のクリーンデー。

住宅地の歩道、公園の清掃・除草などをみんなで一斉に行う日だ。
天気もよくて活動にはまずまずの天気。間もなく終了かと思われた頃、更地の一区画に目が引きつけられた。そこは紫の絨毯。菫だ。他の区画は嫌われ者の外来種がやたら繁茂しているというのに、そこだけがまるで種でも蒔いたかのように別世界。