春の行方

抜き脚に濁りけぶれる苗田かな

夫婦二人が苗代に種をおろしているところに差し掛かった。

今は機械で植えるので、苗代には種をおろした育苗箱ごと植え付け、これをそのまま田植機に搭載すればいい仕掛けにになってるようだ。用土も特別なものらしく大きさが揃った粒のようなものである。
あとひと月もすれば田植できる大きさに育つという。
ほかの田では連休と言うこともあってか、大家族でまるでピクニックを楽しむかのように種まきを楽しんでいる。稲刈りのときもやはり大家族で楽しむのだろうか。ほのぼのとした光景に春の行方をあじわうことができた一日だった、

ヘルシー

草餅の焼くる匂ひに釣られ入る

柏餅の中身は草餅だった。

甘い物は昼食直後と決まっている。だから間食ではない。
そう思うと罪悪感がないのである。
実際に三時のおやつの習慣よりはヘルシーだとも聞いた。
もう何年もの習慣で特別体重が増えたと言うこともない。

春ごたつ

いくそたび春の雷とは思はれず

大きな鉢が飛ばされた。

まる一日大暴れして今夕ようやく去ったようだ。
昨日などはいまどきの雷とは思われないような凄まじさ。
何度も光っては鳴り、まるで夏の雷のようであった。
一転して今日は寒い日となり、久しぶりに炬燵ならぬ床暖房が入り猫どもはそそくさともぐり込んでいった。

平和の祭典に

夕蛙聞いたきかぬの雨二日

菜種梅雨というのだろうか。

コロナに加え二日続きの雨に連休スタートも湿りがち。
大阪では今日44人が亡くなったという。もはや数字には麻痺してしまっているが、さすがに死者44という数字は重い。
災害レベルと言っていい医療崩壊の前には声も出ない。「出るな」「動くな」の対策だけでは今のインドの映像も他所の国のこととは思えなくなる。
よその県から看護師さんを借りているような状態でどこも人材が払底しているなか、今度は平和の祭典のために500人の看護師を寄こせと言う。正気の沙汰ではない。いい加減に目を覚まして欲しい。

つぶやく

鋭敏になる嗅覚の木の芽晴

山椒も柚子も若葉が香ばしい。

指に移った香りを楽しみつつ、家にいながらにして行く春を満喫。
蝶の卵をいくつ落としたろうか。
蝶も命をかけているんだが、せっかくの新芽が丸裸にされるのもつらいのだ。勘弁しろやとつぶやきつつ。

夏の色

左よし右よし平群懸り藤

藤もほぼ終わりかけ。

つい先日までは桜のあとを追いかけるように山藤が平群の里にアクセントをつけて、なかなかの眺めを楽しめた。
今日通りかかると、藤に絡まれていた木がいよいよ茂りはじめ、褪せてきた藤を飲み込むように日々山容がうつろいでゆく。
遠くを見れば常緑樹と落葉樹の高いコントラストに彩られていた二上山も三輪山も、コントラストがあせてきて濃い緑一色になろうとしている。こうなるとまだ生えそろわない若草山の褐色の山膚が遠目にも際だってわかる。
盆地は夏の色に染まろうとしている。