自分の色

塔描く人ら新緑染まりおり

法輪寺を通りかかったら何人かの人たちがスケッチに余念がない。

去年の秋にもこの寺の周りでは写生している人たちが目立った。
どうやら絵描きさんにとって人気のお寺らしい。
いうところの絵になる場所というのは、四季折々に画趣があるのだろう。
今は滴るような新緑の季節。それぞれに自分流の色に染め分けるのだろう。

あやめ科

著莪叢や木漏れ日かかる麓かな

甘樫の丘。

東側の登り口に休憩所があるのだが、その前庭にはみごとな著莪が群れている。
あやめ科らしいが、黄色の斑が強いせいかどこか西洋じみた色合いでバタ臭さがある。
もともと自生する力をもたないので人の手を借りて植えられたものとされる。
万葉集では著莪は詠まれていないので(googleは便利だね)、飛鳥の時代、ここには咲いていなかったのは間違いない。

わが世の春

葉の上を運動場とせし天道虫

2匹の天道虫が茄子の葉のうえで忙しく行進している。

一見して分かるのだが、雄と雌で星の数がまるで違うがナミテントウの仲間らしい。
同じ種類でもこれだけ星の数が違うって初めて知った。

下は天道虫の幼虫らしい。

目の肥やしにも

刈らるべき赤詰草の紅きかな

一般にクローバーといえば白詰草を言うらしいが、この赤詰草は白よりもちょっと遅れて咲く。

帰化植物で各地に分布しているらしい。
詰草とは詰め物に使われていたのでそういうらしい。
「らしい」が三つも続いた。草花には強くないことが露呈したわけだが、名前や由来など知らなくとも道ばたなどに固まって咲いていて、それがどこか昔懐かしい光景と重なったりすると自然に足をとめて眺めることはよくある。

ファームの近くに小さなグラウンドがあるのだが、周囲の柵に赤詰草の群生が見られる。
いわゆる雑草としてやがて刈り取られてしまうのだろうけど、赤が一番きれいなときに写真を撮ってみた。

注)なお、クローバーは春の季語だが、赤詰草の花期よりあえて夏のものとした。

石畳の影

法隆寺生徒の皆は夏衣

法隆寺は今修学旅行の一団で賑わっている。

マイファームへは夢殿のある東院と五重塔のある西院とを行き来する生徒さんたちの行列を横切りながら行くことになる。
今日気づいたのだが、制服をバスに置いてきたのだろうか、引率の先生も生徒もみな白いシャツ姿。
石畳に映る一団の影も段々と濃くなってきた。

嫌みのない雑草

草笛と呼ぶや雀の鉄砲かな

子供の頃穂の部分を抜いてよく草笛としたものです。

笛といっても音階が吹けるわけではなく、ただビーッと鳴るだけですが、空き地などで簡単に手に取ることができたので仲間たちと学校の帰りなどによく鳴らしたものでした。

お隣の空き地に「雀の鉄砲」を見つけたので昔を思い出しました。

幽玄

青い目も芝生の席や薪能

今日、明日と南都春日・興福寺で薪御能(たきぎおのう)が行われている。

薪御能とは興福寺の宗教行事が猿楽に結びつき、室町時代に世阿弥により能として芸術域にまで高められた歴史をもつ野外能である。
いわば元祖薪能なのだそうだ。
今年は金堂再建中なので登大路に面した奈良公園内で行われている。
席はなかなかとれないそうで、ニュースでみるばかりであるが。
興福寺の薪御能についてのホームページです。

能の四流観世、宝生、金春、金剛のルーツも奈良県だそうである。
そういえば、平野を走っているとき、ここは観世流発祥の地と書かれた看板があって、能というのは京都由来のものだとばかり思っていたので驚いたことがあった。