路地抜ける風

往診の看護師つれず路地薄暑

当地は午後休診というクリニックが多い。

午後は夕方5時からというような具合である。
何故なのかなとは思っていたが深く気にもとめずにいたが、たまたまかかりつけ医と街なかの路地でパッタリ遭ってその理由が分かった。
挨拶もそこそこに彼はある家の門をくぐっていった。彼の家のあるところではないようだ。
どうやら、訪問医としての往診のようであった。それこそ、手ぶらで、おそらくポケットには聴診器くらい入っているだろうが、ぶらりと門のなかへ消えてゆくのだった。急を要するという風でもなく、住宅は新しくもないが立派なお屋敷のようであるし、高齢の方の在宅治療のいつもの訪問であろうかとは推測できるのである。
今日あたり空気が入れ替わったようにからりとした青葉風が吹く日である。

成長期

ウェブ会議窓の筍流しかな

黒南風とも茅花流しとも、筍流しとも。

梅雨の前触れの南からの湿った風に、触れるものみな湿り気を帯びて、名前とはうらはらに決して気持ちのいいものではない。
猫たちのトイレの砂もどことなく湿りを帯びて、猫たちだっていい気持ちはしてないのじゃないか。
なんとなくこのまま梅雨に入っていくような、そんな予感のする毎日である。
とはいえ、この時期は筍があっという間に生長する時期でもあり、野菜や雑草もぐんぐん伸びる成長期で、韮が切っても切っても1週間足らずで収穫できるありがたさ。
おかげで今年は韮料理が多い。

電池怠りなく

短夜の地震かと思ふラヂオかな

ふと細かな震動を感じたような気がして目が覚めた。

昨夜だったか徳島沖太平洋を震源とする震度4の地震があったので、もしやその関連かとおもって枕元のラヂオをとったがウンともスンとも言わない。
電池がきれたようだ。
最近はベッドに入ると5分と持たず寝てしまうので、ラヂオを聞くことなどすっかり忘れていたのだった。
このところ毎日のようにどこかで震度3や4の地震が起きていてどことなく気味が悪い。
今朝は覚えているうちに電池交換をしておいた。

解除

受賞者はシルバーセンターばら係

今日は薔薇10句に挑戦。

19日締め切りだから早い目にと思って始めたが、何とか形にはなりそうである。
掲句はそのうちの一句。
今は駐車場閉鎖でフラストレーションたまる、いつもの公園。
プロの造園屋も入るが、地元のシルバー人材センターから派遣された人が雑草取り、枯葉集めなど四季それぞれに下支えしてくれている。そのおかげで、季節ごとのイベントを楽しめるのである。
当県も緊急事態宣言解除されたので、もしかしたらいつもの公園も大丈夫かもしれない。

第二波

処方箋届く卯の花腐しかな

梅雨の走りのような雨だ。

そろそろ薬がなくなる頃だと思っていたら、珍しくかかりつけ医から電話があって薬出しますがどうしますかと。
もちろん一も二もなく好意を受け取ることにした。
この連休明けに予約していた歯医者もキャンセルさせてもらったし、今は人が集まるところには行きたくないという気持ちが勝っている。
ニュースでは緊急事態宣言解除とともに、スーパー銭湯に行列ができたとか。信じられないことである。
初日からこうではいずれ第二波がやってくるのは間違いないだろう。

インフラ

期またぎの砂防工事に夏來たる

かれこれ3ヶ月になろうか。

地区のケーブル更新の工事で道路が何度も封鎖されている。
幹線道路下に埋め込んであるのを、マンホールから差し入れては交換しているようで、なぜだかいっぺんにできないようで何度も何度もブロックを変えては工事区間を変えている。
インフラを支えるというのはこうした地道な作業を延々と繰り返し、全区間終了する頃にはまた更新というぐあいに、果てしがないように思えてくる。
それでも、こうした地下のトンネルにある施設などはいいほうで、実は水道とか下水道とか地下に埋めてある設備や橋などの道路資源というのは予算不足などもあって、相当な規模で老朽化していると聞く。
こうした公共インフラの再整備も思うように進まないのが今の日本の実力なのだ。
そうしたときに疫病や災害に見舞われているという現実に慄然とするしかない。

日替わり

日当たりの壁に派手なる毛虫かな

白壁に派手な色した毛虫がとまっている。

そう言えば、柿の若葉にもでんと毛虫がのってたな。
去年、蓑虫が増えたブルーベリーも心なしか葉っぱが食われているようである。
なにしろ10匹以上ぶら下がっていて、これがみんな生きていたらブルーベリーも敵わないだろう。
葉が茂れば虫たちも活発になり、鳥も子育てに忙しい。
いつも一人だったイソヒヨドリが最近増えたようで、電線をあちこち移っては素敵なソプラノを聞かせてくれる。
巣籠もりの毎日だが、句の材料が日替わりに目の前に現れては楽しませてくれる。