歌枕

多武峰見上ぐる丘の捩り花

飛鳥万葉文化館の庭園がきれいに整備されて季節の草花が咲いている。

半月ほど前に訪れた時、万葉の径の芝生に点々と捩り花が咲いていた。
それぞれ万葉に歌われた植物に即して萬葉歌が紹介され、捩り花の芝生の斜面の樫の木には、

片岡のこの向つ峰に椎蒔かば今年の夏の蔭にならむか 巻7-1099

芝生はちょうど斜面になっていたので、片方しかない丘、片岡はここかと勘違いして向かいの峰、すなわち多武峰を振り返って妙に感じ入っていたのであるが、まったくの勘違い。
「片岡」は歌枕なのだった。自宅より少し南に少し行ったところにあるあたりらしいが詳らかではない。

半年の穢れ

増水の渦に形代ねぢれゆく
水嵩のふえて形代ねぢれゆく

今日は夏越しの祓。

春日大社の摂社では春日山からの流れが細くていつもは形代がとどまっていることが多いのだが、雨がこれだけふればかなり流されることだろう。
この日、形代に体を触れさせて半年の穢れを移しふっと息を吹きかけて川に流すのだが、大きな神社では萱の舟などにまとめて禰宜が流してくれる。
たいていは真似事みたいな形で終わるのだが、水が豊富な上賀茂神社にかぎっては本格的な流しとなる。

猫受難

同じ頁繰って戻され冷房車

昨日からとうとう冷房の出番だ。

昼間は扇風機で十分しのげるのだが、夕飯の用意するころになるとその熱が居間全体にまでこもってしまう。
逆に、外はいくぶん涼しくなりかけていて、そのギャップをやたら感じてしまうともういけない。
数時間の冷房だが、それさえ嫌う猫どもはもっとも冷気のこないところに避難してしまう。
猫たちにとっては受難の季節だ。

日焼の子

半年の垢掻いだしてプール干す

梅雨入りを前に町営プールが磨かれた。

すでに一か月近く干してあったのは日光による消毒か。
ひび割れを防ぐ目的だったと思うが、昨年の九月から満水状態だったのを来月上旬に向けてプール干ししたのだ。
小さな町のプールだから子供対象のプールだが、いよいよ暑くなるとそばを通るたび水浴びしたくなる。
プールには日焼けした親子がよく似合う。

荒れ模様

梅雨入の大阪停まるG20
梅雨入の遅れてけふの荒れもよひ
スリッパを床に取らるる梅雨湿り

やっと梅雨入り宣言したかと思えば、台風に発達するかもだなんて。

やれやれ、大変な梅雨デビューである。
おまけにニュースを見ると、高速道路もがらんがらんに大阪の都市機能はまるで停止したかのような様子。年の前半締めを前に商都大阪も迷惑な話であろう。
これで、世界経済や環境問題などに進展があればいいのだが、わがままなパワー大国次第というのでは心もとない。

悪循環

愛称で呼びあふ夢に明易し

昼間の活動が足りてないせいか何度も目覚める。

その直前は何か脈絡のない内容だったり、懐かしい友の夢を見たりする。
いったんこの悪循環にはまるとなかなか抜け出せないものだ。
当たり前だが運動したり散歩したりしなくちゃと思うが、暑さというか、日射の強さに腰砕けになってしまうのである。

歯がゆい蝶

迷い來し蝶放さざる日除かな

ひたすら明るい方、上を求めて。

蝶が日覆いのかかったラン棚に紛れ込むと彼らは脱出の術を知らない。
日覆いの下部や北側ががらんがらんに開いているのに、そちらから脱出することが選択肢にないのだ。
いたずらに上の明るい方へ向かって脱出口を探すばかりなのである。
気がつかずにいると翌日も上の隅に翅をたたんだまま身じろぎもしないでいることがある。
仕方がないのでその都度日覆いを外しては逃がしてやるのだが、見ていて歯がゆいほどだ。
紋白蝶や黄蝶など小さい蝶はこんなことはなく、ほとんどが揚羽や黒揚羽である。両者の行動パターンには大きな差があるように思える。