髪切りに

スチームに骨もほとびる床屋かな

髪切りに。

理容店というのは常時タオルを蒸しているせいか店内には蒸気があふれ、暖房ともあいまって油断するとすぐに居眠りしてしまう場所だ。気がついたら起こされていたりとか。
すっかりリラックスして表に出れば、随分温かい日とはいえちょっと首筋にひんやりしたものが。ただでさえ薄いのを短くしたものだから、髪のなかを風が通り抜けてゆく感覚は一瞬だが心地よいものだった。

汗ばむ

手袋を脱いで大手の日和かな

今日も暖かい日だった。

ここのところ散歩には手袋が欠かせなかったが、今日くらい暖かいと手袋はおろか、ダウンの防寒ウェアすら不要だった。おかげでいつもより軽装で足取りも軽く。10分も歩くと汗ばんできた。

温室状態

窓開けて車走らせ春隣

天気がいいと車の中がまるで温室状態。

昨日などは少し窓を開けなければとても暑くてたまらないほどだった。こんな経験は3月になるとしょっちゅうなんだけど、今年は早くもといったところだろうか。

今日は一転して雨。だが、土が黒くしっとりしてきて、まるで「穀雨」ではないかと思えるほどだ。

探鳥

おほかたは鴨の池なり番鴛鴦

(おおかたはかものいけなりつがいおし)

平城天皇陵近くの水上池に行ってみた。

巫女アイサが来る池だというので出かけてみたのだが、地図で見るとおりこのあたりは陵濠やため池が多いところで、通りがかった人に話を聞くと他にもいろいろな鳥が飛来しているらしい。
トモエガモが来ていると聞いたから来たという人、近くの平城京でベニマシコの写真を撮ってきたという人、散歩のひとも次々やって来て、情報交換をしている。カイツブリが長い尾を引いて鳴くし、コガモもピーピー笛を鳴らす。ハシビロガモと思われる集団もいて賑やかなこと。
で、肝心の巫女アイサだがこのところはあまり見かけないとのこと、かわりに昨日は100羽くらいはいたという鴛鴦が今日はわずか残っていて水面を滑るような番の優雅な姿を見ることができた。

春の足音

四日目となれば四温のありがたき

今週は暖かい日が続くという。

さしずめ今日は初日の一温になるが、これが四日目まで続くとなると寒のなかだけに春がそこまで近づいている実感がます。一般には三寒四温というのはむしろ立春以降の日々に言うことだという感が強いが、どうして立派な冬の季語なのである。

創作句

探梅行気づけば皆とはぐれをり

塀越しに見る梅の蕾もずいぶんしっかりしてきた。

近くには完成してずいぶんの年月になる住宅団地があるので、それぞれの家の庭木も立派なものがある。とりわけ、今の時分楽しみなのは、枝垂梅であるにせよ、普通の花梅、実梅であるにせよ、丹精込めた梅が果たして白なのか紅なのかを一本一本想像しながら歩くことである。
当地の開花は早くても半月ほど先になりそうだけど、その分探梅の楽しみもそれぞれにあっていいものである。

掲句は随分前に青梅梅林をハイキングしたときの光景を思い出しながら詠んだもの。みんなと出かけるのだが、それがいつの間にかいくつかのグループに別れたり、時には気づくと周りには自分以外には誰もいなかったりする。全くの創作だが、こんな作り方も当然あっていいだろう。

悼む

寒い夜悼み語らふ人恋し

やっぱり、いけないね。

家人に話してみてもそのときの一回きり。もうそれが二度と話題に上らなくなる。それが世の常だろう。
友の死を一人で受け入れるのは難しいものだ。故人の思い出をやはり悲しいと思う人と語り合ってみたいと無性に思う夜である。